時代は変わるー出会いと別れ [My Opinion]
今回の映画。舞台となるのは1983年。
当時、僕は21歳。自主映画作りをしていた。8ミリフィルムで映画を作り、宣伝、上映会。業界の人たちに認められてプロデビューを目指す。80年代後半のバンドブームのようなもので、世間も注目。多くの若手がチャンスを掴んだ。が、そんな絶好の機会は長く続くこともなく、業界では「8ミリ映画をやっていたくらいでは、プロとして通用しない!」という意見も増えて行き、やがて自主映画出身者への扉は閉ざされた....。
僕はそんなビッグウェーブに乗り遅れた1人。
「いや、まだまだ、俺はがんばるぜ!」という友人もいたが、ある歌を思い出す。ボブディランの「時代は変わる」。そう、自主映画ムーブメントは終わり、時代自体が大きく変わろうとしていることを感じた。時代の波が変わるのだから、僕自身も舵を切らなければ。。。。そんな予感がしていた。実際、日本は間もなくバブル時代に突入する。
83年に「バイバイ・ミルキーウェイ」
という青春ファンタジー8ミリ映画を撮り、上映会を終えたあと。僕はアルバイトを始める。「もう、日本で8ミリ映画を続けていてはいけない!」そう感じたからだ。そして、ロサンゼルスの南カルフォルニア大学に留学(USC)。映画科を希望していたが、語学力がないので、まず英語コースからスタート。もちろん、LAで勉強したから、何か大展開がある訳でもない。ハリウッドで就職できるものでもないのだが、変わり行く時代の中で、昔からの憧れである映画の聖地で勉強することに意味があると強く感じたのだ。
その後、USCの映画科に合格。
憧れのジョージ・ルーカスらの後輩となり、大学生生活を続けていたのだが、5年ほど経つと、また大きく時代が変わることを感じた。このままアメリカにいても何も変わらない。そう思えて、1年後に帰国。日本でシナリオライターを目指しながら、アルバイトを始めた。実際、日本ではバブルが崩壊。アメリカはコンピューターバブルで不況を打破。復活して行く。再び時代が大きく動き始めた。
「あ!時代が変わる。このままじゃいけない」
と感じるとき、舵を切る。最終的な目標はいつも同じだ。映画監督になり、多くの人を感動させる映画を作ることなのだが、時代の波が変わるときには、航路を変えることも大切。ときには荒波の海であっても、その航路を選ばなければならない。理由はよく分からなくても、自分が感じたことを信じて進むことで、結果、大きな展開をしてきた。
帰国してもう、23年。
「時代は変わる」と感じることがしばらくなかったが、今回の「向日葵の丘ー1983年夏」を撮る前から、久々に「何かが変わる?」という感覚が蘇って来た。時代が変わるのか? 日本が変わるのか? 僕の環境が変わるのか? 何が変わるのか?まだ分からないが、大きな何かが変わろうとしている。ただ、時代の変わり目はいつも寂しい。
長年の友人との別れ、
住み慣れた場所を去り、環境が大きく変わる。引っ越しをするからという意味ではない。時代の変わり目にはいつも、大切な人との別れが訪れる。運命が引き裂くとしかいえない別れが訪れる。新しい物語の始まりは、終わり行く物語で共に戦った、或は、助けてくれた仲間が必ず去って行く......。
それが「時代は変わる」ということなのか?
時代を超えるためには犠牲がつきものか? 共に夢見た仲間をおいて行くしかないのか? そして、いつも僕はそれを見送るだけだ。ただ、新しい出会いもある。これまでに出会わなかった人たちが登場し、大いなる力を貸してくれる。応援してくれる人もグンと増える。それは本当にありがたく、うれしいことなのだが、新しい船には乗れない友のことを思うと、心が引き裂かれる。
だが、留学時も、帰国時も、
その悲しみを超えて次のステージに上がり、新たなる戦いがスタートした。そう、たぶん、今回も次なる戦いが待っているのだ。多くの新しい仲間と、同時に古くからの友人たちと共に挑む戦い。希望を伝える映画作りをせなばならない。時代の涙を拭き、前に進まねばならない...。
2014-05-27 12:55
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監督さんの映画で、前に進む勇気をもらえました。
「ストロベリーフィールズ」、「青い青い空」、「朝日のあたる家」…、
どの映画も、人生のほろ苦さ、挫折や別れがありながら、前へ進む人々が描かれていて、
誰もが、波間に浮かぶ小舟でありながら、あきらめない力を持つことだけが、時代を生き抜く武器になってくれること、教えてくれていますよね。
人生、良いこともあれば、悪いこともあります。
そんな時、あきらめるという逃げ道を選ばない登場人物達が、
観る者の心にいつまでも住みついて、ことあるごとに、蘇ってくれるのです。
悲惨な経験をした登場人物でさえ、素直さを決して失わない姿が、私達に大切なことを教えてくれるのです。
新作映画、「向日葵の丘・1983年夏」の登場人物達が、私の心の新たな住人になって、心強いパートナーとなってくれること、
心待ちにしています♪
by 梅茶 (2014-05-28 05:50)