SSブログ

映画「向日葵の丘 1983年・夏」撮影現場ルポ その26 [撮影ルポ]

himawari_B5_omote_18 2.jpg

映画「向日葵の丘 1983年・夏」撮影現場ルポ その26
~16時間の撮影が続いた1日~

by 永田よしのり(映画文筆家)

 田中美里演じる大人・みどり、常盤貴子演じる大人・多香子との病室での再会シーンを撮影し終えた後は、場所を移動。

 病院の屋上で2人が会話を交わすシーンの撮影に移る(実際の映画では別の日のシーンとなるのだが、撮影自体は同じ日に撮ってしまうのだ/つまりみどりと再会してから日時が空いた後の場面となるために、大人・多香子となるために大人・みどりの心境にも少し変化が生じているという演技が要求されているのだ)。

 パジャマ姿の大人・みどりと、大人・多香子が、別所哲也演じる大人・将太が自分の子供たちと遊んでいる姿を見ながら、あることについてみどりが多香子に謝り、そしてそれに付随してある計画を多香子が思いつくという場面だ。

 屋上から眼下に見える街の風景を見下ろす2人。




 まだ夕方になる少し前の時間帯、天気は良く、時に流れていく風も心地良い。

 2人の姿をキャメラはアップ(近づいて人物に寄っての撮影)、ロング(離れた場所から人物の全体を撮影)と、数カットが撮影される。ロングの場合は監督やキャメラなどのスタッフは、かなり上の位置から撮影していた。




 数十分前の涙に溢れていた病室とは、やはり外での撮影は雰囲気も違い、やはりどこか開放的に感じられる。

 そんな場所だからこそ、大人・多香子がある計画を思いつくに至るのではないだろうか。そんな計算もされて脚本が書かれているような気がするのだが。
 
 病院の撮影を全て終えたのは陽が暮れかかってから。

 田中、常盤の撮影シーンは終わり、次に家山地区にある島田市の川根文化センター・チャリム21へと移動。

 これからは夜の撮影、映画館かもめ座での撮影となる。

 ここへも美術スタッフたちは、他のスタッフたちよりも早くに移動して来ている。

 内部の飾り付けの最終確認や、段取りなどに忙しく動いている。撮影もかなり終盤戦。見ているとやはりそれぞれのスタッフたちには疲労の色が見え隠れしている。

 俳優陣は津川雅彦演じる梶原支配人、その孫娘スタッフ信子役の市民俳優Mさん。芳根京子演じる高校生・多香子、藤井武美演じる高校生・みどり、百川晴香演じる高校生・エリカ、病院撮影より移動して来ている常盤貴子演じる大人・多香子、田中美里演じる大人・みどり、別所哲也演じる大人・将太、さらに藤田朋子演じる大人・エリカの姿も。

 その他に市民俳優の方たちが20人ほど、という大所帯に。

 この場所でポスター撮影や、地元のテレビ局の取材で各俳優たちへのインタビュー取材も入るため、この場所での撮影には映画の撮影以外の段取りも必要となる。




 現場対応のスタッフは、それぞれの時間対応や、撮影の段取り、俳優たちの動きなども合わせて検討している。やはりいつもの撮影隊だけではない、外部スタッフが入ってくると、動きも慌ただしく思えてくる。

 俳優陣の控室をのぞくと多香子、みどり、エリカの大人役の3人と高校生役の3人が談笑している。多分、これまでの撮影でこの6人が揃うというのは初めて。そこに津川、別所らも加わり、まるでずっと長く一緒に同じ場所で時間を過ごしたひとつの家族のよう。

 何か胸の奥が暖かくなる瞬間を感じてしまう。

 監督は「大人の多香子たちと、高校生の多香子たち、3人それぞれが僕にはダブって見えてしまってるんだよねえ」と、笑う。

 テレビ局取材などを終えて、次の撮影に。

 かもめ座での梶原支配人の細かい場面数シーンを撮影(客席に座っているシーンには市民俳優たちも参加、他にも劇中では写真として使われるシーンなどを数カット)する。

 梶原支配人の撮影は小1時間ほどで終了、津川雅彦の出演場面は、この日で終了、花束が渡され、スタッフ・キャストらの拍手と共に手を挙げて退場して行く。その姿を常盤、田中、藤田、別所らも拍手で見送っていた。




 この時点で夜も9時半近く。

 そして、場面は変わり、高校生・多香子、みどり、エリカが、かもめ座で映画を観ながら、自分の感情を押さえ切れなくなる、という場面が撮影される。

 ここでは監督から「エリカの本質を、多香子とみどりが見てしまい、気持ちが分かることで一緒に感情があふれ出るシーンだから」と3人に説明がある。  

 この場面は映画本編では比較的前半で登場するシーン。
 だが撮影はこの終盤になった。

 それは以前にも書いたが、ひとつのロケ場所を何回も訪れなくてもいいようにと計算されている(そこでの時間軸が変わっていたとしても、同じ場所で撮影出来るシーンは、重ねて撮影するという合理的な方法)、撮影スケジュールの関係上でのこと。

 もちろん、ここで実際に高校生・多香子たち3人娘たちの前に映画が上映されているわけではなく、スタッフが、スクリーンのある位置にライトを当てて、映画が流れているように演出がされているのだ。

 それにより、彼女たちは実際に映画を観ているような想像と感覚で芝居をしているわけだ。役者というのは本当に想像力の仕事なのだ、と実感する場面でもある。

 そんな撮影が終了したのは、午後11時を過ぎた頃。

 今日は、長いシーンがあったため、実に16ページ分という、今までの撮影で一番多い分量を撮影(脚本のページ数の多い少ないで、その日の撮影の撮影時間が決まるわけではけしてないのだが)。

 朝7時頃から動いていることを考えれば、実に16時間の稼働ということになろう。

 スタッフたちの疲労もピークに近くなってきているのではないだろうか。
 撮影もいよいよあと2日。

 明日は大人・多香子が、帰郷して実家に帰る道すがらの情景場面などから撮影をする予定だと、帰り道で聞いた(つづく)。

himawari.jpg
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。