映画「向日葵の丘 1983年・夏」撮影現場ルポ その15 [撮影ルポ]
~多香子、みどり、エリカが「雨に唄えば」のシーンを再現~
by 永田よしのり(映画文筆家)
2014年4月26日、土曜日。
この日は撮影初日以来の教室でのシーンなど、学校での撮影の1日。それと共に、校舎周辺情景などの細かいカットも撮影。それらは映画の中でカット変わりなどに使われることになる。
まずは卒業式のシーン撮影。市民俳優も多数参加しての撮影となる。卒業式の案内が書かれた入口、校舎、中庭の様子、用務員役の飯島大介(「戦場のメリークリスマス」「カムイ外伝」など出演映画多数)がリヤカーを引いて入る様子、高校生たちのダンス・シーンなどを次々に撮影していく。
シナリオ中のページ数にすれば2~3ページ分、短いカットが撮影されていくのだが、台詞のある芝居がないために、撮影はどんどん進んでいく。
それにしてもどうしても気になってしまうのが、高校生役の市民俳優たちの撮影現場での対応のあり方。
撮影現場に臨んでくる姿勢とでもいうのか、性格の違いだろうか、しっかりその日の撮影内容を把握して、予習復習してくる子とそうでない子の差がハッキリと現れている。
特に何をやっても、対応できない子はいつまでも変わらない。1983年当時のギャグを演じる場面なども、そのギャグがどういうものなのかは全く知らない様子(今ではネットでなんでも一応確認できる時代なのだが、検索して見た様子がないのは明らか)。
それが撮影を中断させる、ということも考えてはいないのだろう。そうかと思えば、1983年当時のヒット曲や、流行したものをちゃんとリサーチして覚えてきている子もいる。
個人の資質と共に、親の躾なども透けて見えてきてしまうような気がする。映画としてずっと残る、ということをどう意識しているのだろうか。まあ、遊び感覚で撮影現場にやって来ているのかもしれないが、そのままの姿が映るのは、素人の高校生がいるということでは正しいのかもしれないが。
これもある意味のドキュメンタリーなのかもしれない。
そんな撮影が続く中、午前中最後のシーンは、多香子、みどり、エリカたち3人が傘を持って、黄色いレインコートを着て、映画「雨に唄えば」のシーンを唄い、踊るというミュージカル・シーン。そこには、撮影を手伝ってくれている、鯛焼き屋のウメさん(岡本ぷく)たちがお弁当を作って持ってきてくれる、という場面でもあるので、
現場の手伝いに来てくれている人たちが実際にさまざまな料理(おむすび、煮物、サンドウイッチ、漬物、肉ジャガ、卵焼き、串だんご、さつまあげ、フルーツまで!)を作って参加してくれている。そしてこのお弁当はスタッフたちの昼食にもなりえるという、まさに一挙両得!
3人娘たちは山のようなお弁当の量に「今、食べたい!」と、興奮気味。まだ午前10時半なのだが、もうお腹が減ってきているのか?
そんな市民応援団たち2~30人が参加しての撮影が学校の中庭で始まる。
本番前に多香子、みどり、エリカら3人は入念に踊りの振り付けや歌詞などを練習。監督からは「とにかく笑顔で!」とアドバイスが飛ぶ。いかに楽しくできるか、がこのシーンのポイントとなる。
3人が持っているのは黄色の水玉のビニール傘、それにアウトドアグッズを良く知っている人ならお馴染みのメーカー・ロゴス黄色いレインコートに肌色の長靴という姿。
3人娘はステップの順番や、歌などを本番前に何回もチェック。
この場面は多香子たちの撮影している8ミリ映画撮影のシーン。なので、その撮影の様子全体を撮影する本編キャメラは、俯瞰で押さえるためにやや高い位置にセッティング。
3人娘たちを狙う本編キャメラの撮影範囲に入りそうなものは全てスタッフが片付けている。
そして、脚立に上がった高校生・ヒデキがホースでシャワーのように、雨降らしをする用意(その場面は実際の本編キャメラに収められる)をして、リハーサルを何度か行い、本番となった。
ここで、映画の神様が舞い降りた、としか思えない場面が訪れることに。(つづく)
2015-04-24 17:24
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