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「向日葵の丘 1983年・夏」撮影現場ルポその1・撮影が始まる前から寝不足のスタッフたち!? [撮影ルポ]

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 BY 永田よしのり(映画文筆家)

 2013年の太田隆文監督「朝日のあたる家」の撮影現場取材におじゃましてから早1年。
 2014年も前年と同じ静岡県(今年は島田市)にて、新作映画「向日葵の丘/1983年・夏」のロケにおじゃますることとなった。
 昨年と少し違うのは、今年の僕はオフィシャルという立場にいること。
 これにより、昨年とは少しばかり立ち位置が変わって、太田監督曰く「今回はオフィシャルなので堂々とスタッフの顔をして来てください(笑)」と、ある意味お墨付きをいただいたのだ。
 しかしながらオフィシャル、という立ち位置にいる、ということは僕の思いだけで好き勝手に物事を書き、紹介してはならない、という当たり前の制約もつく。
 そのために撮影ルポの公開もこの時期になってしまった。
 それはルポを読まれる読者の方々にもご理解していただきたいと思う。
 
 今回のロケは、2014年4月20日の日曜日から5月6日の火曜日までが撮影期間。
 監督らスタッフは数日前から前乗りをしている。
 僕は前日に市民俳優たちの衣装合わせがあるとの情報を受けて、
島田市の文化センターで、19日の土曜日夕方から行われる現場に入ることにした。
 自宅を自分の運転する車で出発したのは、19日土曜日の午後2時半頃。高速道路情報では東名高速道路も混んでいる様子がなかったので、その時間に出ることにしたのだ。
 道中まったく混雑した箇所はなく、片道約250キロの道を少しのんびりと3時間ほどかけて島田市に到着したのは、夕方6時頃。

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 衣装合わせをしている島田駅近くの、文化センターではすでにもろもろの作業が始まっている時間。
 会場に入り挨拶、市民俳優らの衣装合わせの様子を拝見することに。
 この日の衣装合わせの人数は10人ほど。
 それぞれの役どころと姿形に合わせた衣装が選ばれていく。
 隣の部屋ではヘアメイク、ヘアカットもされていて、学生役の女の娘たちが軒並み1983年当時流行っていた松田聖子のヘアスタイルにしているのだそうだ(果たしてどんな集団になっているのか、明日見るのが楽しみ)。

 部屋には、監督の他、アソシエイト・プロデューサー、衣装部、ヘアメイク、スチールやメイキング班など10人ほどのスタッフ。
 順番に入って来る俳優さんたちの衣装を、監督のイメージに合う雰囲気の服装になるように、持参した服と、衣装部の用意した服とで何度か着てみてから決定(着替えは部屋の一角に仕切られたコーナーの中でする)。ちょっとした着せ替え人形状態なのだ。
 そこでは衣装だけでなく、髪形も決定。
 一人短い人で10分ほど。

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 中には太田監督映画には欠かせない岡本ぷくさんも(故・清川虹子の弟子であり、現在は静岡県在住で演劇活動あろゑプロジェクトでの活動も。映画では山本薩夫監督の「ああ、野麦峠・新緑篇」やテレビドラマでは「翔んだカップル」に当時は岡本珠子として出演している)常連俳優らしく、スタッフらとも顔なじみ。
 常に明るい雰囲気で笑いの絶えない中での衣装合わせとなった(実はこの岡本ぷくさん、後に役者仕事以外で僕らを大変支えてくれることを知るのだが)。

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 衣装は着てみて、一見してイメージと合わないものはすぐに却下。着ている服が変わるだけでその人のイメージは随分と変わるので、ここでの作業はとても重要なものなのだ。
 ぷくさんの役は「たいやき屋・桜屋」のウメおばさん。ぷくさん曰く、実際にロケハンされたたいやき屋のオバあちゃんが短髪だったため、撮影では「自分も髪の毛を短くしようと思っていた」のだそうだ。だが、監督との話し合いの末に髪を切ることなく撮影に臨むことになったという話も。

 若い頃の将太という主人公の隣人を演じる小池亮介(上記・あろゑプロジェクトですでに何本もの舞台にも出演している若手俳優)の場合は「もみあげが長いので切れる?」と注文。それはかなわなかったので、ヘアメイクでうまくもみあげを短く見せることに。追加で監督からは将太のきまりごとのような癖をひとつ考えておくこと、と注文が入っていた。

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 劇中で主人公たちの重要な場所となる映画館・かもめ座の梶原支配人の孫役・信子に選ばれたのは市民俳優の女性・Mさん。映画館での服装ということで衣装合わせではポロシャツが選ばれた。明るい色のポロシャツに、靴紐の色を明るくすることで決定。髪の毛は黒くすることに。彼女は市民俳優として映画出演が初めてなので、色々と不安もあるらしく、監督に細かい心構えや自身の不安感を取り除くかのようにいくつも質問を繰り返していた(その気持ちはよく分かるというもの)。
 さらに彼女は出演シーンが終わっても現場の手伝いをしたいと申し出ていて、製作部スタッフと追って打ち合わせをすることにもなった。
 映画撮影現場ではたくさんの人が働いており、専門的な仕事をする人以外に現場の中で雑用をこなす人員は必ず必要なのだ。そうした場所にMさんのように申し出てくれる人はとても有り難く、大事なものとなり、ありがたいものなのだ。
 部屋では監督と助監督が、衣装合わせ以外で空いている時間を見つけては様々な打ち合わせをしている。撮影開始前日とはいってもけしてのんびりと構えているわけにはいかない、むしろあれはどうだったか、これはどうすべきだったか、と考え出すとキリがなくなるもの。多分に懸案事項はたくさん残されているに違いない。

 そして、最後に主人公となる高校生たちの担任・尚子先生役の仲代奈緒(仲代達矢の娘であり、舞台や朗読劇などに出演をしている/自ら企画・製作・演出を手掛けた、戦時中の家族の姿を描いた朗読劇『大切な人』が好評で、全国で公演中))さん。
 監督から役どころの説明が細かく再確認され、映画の中での先生に似合った服装が決められていく。
 5パターンほどが決められ、そこから劇中で着る服が選定されていくようだ。
 監督からは尚子先生の悲劇性という言葉が何度か使われた。それはある人の一言が、言われた人の人生を良くも悪くも変えていくことがある、という監督の考えでもあろう。
 それは太田監督の映画に一環している「何が一番大切なことなのか?」というテーマにつながっていくものでもある。
 そこでの人としての悲しみ、教師としての葛藤をどう見せていくのか? そこは「自分の中で消化しない不安な状態のままで演じてもいいのかもしれない」と監督。
 仲代は「今から踊りのシーンが一番不安」と言う(どんな踊りかは映画のストーリー上今はまだ明かせないが、とても重要な心に響くシーンなのだ)。
 そしてそれは撮影初日から演じることになるのだが。
 そんな衣装合わせも午後9時半過ぎに終了。
 片付けをして、宿泊所に向かうことに。


 宿泊所は島田市街から車で30キロほど離れた場所にある。
 監督曰く「入ったら逃げ出せない場所(笑)」なのだそうだ。
 宿泊所は以前学校だったものを改装して合宿所にように使えるもの。
 僕の部屋は2階の8人部屋。二段ベッドの上を確保した。

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 廊下やトイレ、洗面所などが、通る度に自動で明かりが点くのにちょっと感動してしまった(笑)。
 宿泊所に到着したのは、午後の11時頃。その時間でも食事が摂れるのは非情にありがたい。
 しかもその食事の用意をしてくれていたのが、映画に出演もしている岡本ぷくさん。

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 なぜにぷくさんが食事を作ってくれているかというと、当初は撮影スタッフらのために地元ボランティアの方々が食事の用意をしてくれることになっていたのだが、断りの連絡が入り、スタッフ一同困っていたところ、ぷくさんが名乗り出てくれたのだそうだ。
 ぷくさんは毎日違うメニューを考え、「スタッフが食事で不自由する現場はろくなもんじゃない(笑)」という信念と男気(!?)のもと、今回の食事の準備も担当してくれることをここで知る。
 自分の出演シーンもあるのに、毎朝毎晩食事の用意もしてくれる。本当に頭の下がることだ。
 本当に映画撮影の現場はどこで何が起こるか分からない。それを現場で即時対応していくことで、映画撮影の現場は進んでいく。
 翌日のロケ出発時間は朝の8時予定。

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 それでも撮影初日前日、美術スタッフたちは後で聞くと明け方の4時くらいまで作り込みの作業をしていたのだという。
 もう初日はほとんどのスタッフが寝不足状態。それでも映画撮影は始まり、いつかは終わる。
 撮影の期間の数週間を、役者やスタッフ、そして映画に関わった者たちがどんな思いで撮影現場を後にすることが出来るのか。
 そこで笑顔の弾けるような終わり方をしたとしたら、この映画の成功も想像できていくような気がする。
 いよいよ翌日から撮影開始。どんな時間をここで皆が過ごすことになるだろうか。

 (つづく)

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