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映画界にもたくさ〜んいるブラックな人たち? [映画業界物語]

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僕の場合。撮影前に何年も準備をする。自分で取材、そしてシナリオ書き、ロケハン、地元の人たちとのネットワーク作り、ロケ車の交渉、宿泊の手配。全部、僕自身が行う。本来、P(プロデュサー)や制作部の仕事なのだが、全部やる。

それら全てができてからスタッフを集め、撮影となる。なので、実は撮影前にはもうフラフラ。医者に行くと「過労だからしばらく休養を取れ。無理すると過労死するよ」と言われるのが常だが、そこから過酷な撮影が始まる。

もう、かなり前の話だが、その撮影がやっと終わったとたん、撮影直前から参加したPが「1ヶ月で編集をしろ」といいだした。映画はいろんなスケジュールがあり、公開、宣伝、試写等もあり急がねばならないこともあるので、がんばっていた。ところが作業を始めると量が多く、とても1ヶ月ではできない。それでも何とか閉め切りに間に合わせようと朝起きてから、夜寝るまで編集していた。食事は片手で食べられるものだ。

でも、睡眠時間削って作業を続けていたら、とうとう熱が出て、頭クラクラ。まっすぐ歩けなくなる。で、Pに連絡。2日間だけ作業を休む。だから完成は2日遅れると告げる。「遠慮なく休んでください。体が大事ですから」と言うと思ったら「休むのは勝手だけど、〆切は31日で変わりません。でないと、多くの人に迷惑がかかりますから!」と言うのだ。体調を気遣う素振りなし!

こちらは頭クラクラの状態。それでなくても撮影前に休養しろと医者から言われている。無理を押していつも映画作りをしている。それを知っているPの言葉とは思えないものだった。「大変とは思うけど、支障がでるのでがんばってほしい」ならまだ分かる。それが「〆切は31日で変わりません」だ。

けど、外部の人に迷惑をかけてはいけない。頭クラクラで作業を続け、予定とおりにどうにか...編集を終えた。(完成後は半年以上、寝たきりに!)その編集作業終了をPに報告。素材を見せたら「ご苦労様」ではなく「やっと見れたよ~」と言われた。さらに公開や宣伝。試写について訊くと「まだ、何も決まっていません」という。だったら何で31日にこだわった?と訊くと「何事も早めにやっておくことが大事です。いざというときもありますから」と言われた。

こちらが高熱にうなされ、頭がクラクラしながら仕事し、医者から「過労死するから休め」と言われているのに、何も急ぐことはなかったのである。「多くの人に迷惑がかかる」というから、病を押して作業したのに、それは嘘。誰も迷惑しない。Pの安心感のためだけだったのだ。

編集作業が終わり、次は音楽。多忙だがとても腕のいい音楽家さんが作曲。忙しい中で仕事を引き受けてもらった。その彼から電話があった。

「監督。困っているんですよ。Pから毎日のようにメールが来て、早く作業をしてほしい、それができないと皆が迷惑する。音楽の上がりに合わせて各社は、予定を立てていますからーとうるさく言って来るんです。俺が全て悪いかのように言われて参っています........」


........呆れた。僕に言ったのと同じ嘘をついて、音楽家さんを追いつめていたのだ。待っている外部の会社なんてない。上がりに合わせて予定なんて立てていない。今回もまた自身の安心感のために急がせているだけだ。そこで音楽家さんには「何も予定は立っていません。多忙の中、仕事を引き受けて感謝しています。急ぐ必要はないので、じっくり作業してください」と伝える。

そしてPには「必要性のないことでスタッフにプレッシャーをかけて急がせるのはやめてほしい」と注意した。ら、「私はそんなこといってませんよ。何かの勘違いじゃないですか? もし、そんなことをいった人がいたとしたら注意しておきましょう」

でも、こんなタイプのPは多い。スタッフを歯車のようにしか思っていない。すり切れるまで使ってポイ。嘘でもなんでもついて、無意味に追いつめて、自分は何もせず安心していたい。結果、スタッフがやる気をなくし、去って行く。或いは過労死するまで働かせる。ブラック企業の社長もこんなタイプなのだろう。

その作品以降、僕の編集は自分で期間を決め、作業をして問題があるようなら完成日を遅らせる。下手に焦って〆切に間に合ってもクオリティが低ければ意味がない。僕だけではない、スタッフに対しても同じ。歯車のようい扱い、嘘で追いつめてはいけない。必要な時間を作り、彼らが最大限の力を発揮できるようにするのがPや監督の仕事なのだ。

この時期になると、いつもそのことを思い出す。今回の編集も苦戦。粗編集終了の予定が7月下旬だったが、数日遅れてしまった。今かかっている詰め編集も2週間ほどで終えたいが、巨大な山に昇るような作業。はかどっていない。単なる作業を超えた、戦いの日々だ。精神的なイライラが頂点になる。2ヶ月も編集すると体力的にもキツい。でも、ひとつひとつ大事に進めたい。誰かの安心感のために急いではいけない。大切なのはよりよい作品にすることなのだ。

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