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【「天空の蜂」は原発を攻撃するという衝撃的な映画だが.....】 [映画の話]

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【「天空の蜂」は原発を攻撃するという衝撃的な映画だが.....】

「標的は原発」というセンセーショナルなキャッチコピーで興味を惹かれた映画「天空の蜂」をようやく観ることができた。「朝日のあたる家」で同じく原発を題材とした映画を作っている僕としては、どこまで踏み込んでいるか?関心があった。映画サイトの紹介では「大手映画会社がタブーに挑む」と見出しを出すこともあり、注目した。が、それほど踏み込んだ物語にはならないのではないか?とも予想をしていた。

すでに原発の問題点、事故の被害の凄惨さは報道されており、多くの人が知るところである。だが、次第に事故は風化して、多くの人が関心をなくし、それを待っていたかのように日本中の原発を再稼働を進める人々がいる。そんな時期に大手映画会社が原発の危険性を訴え、再稼働の妨げになるような映画を作るとは思えなかった。

その「天空の蜂」をようやく観たのだが、まず映画としてはドキドキハラハラとても面白くできている。手に汗握るとはこのこと。日本映画はこの種のエンタテイメントがうまくないのに、かなり面白い。ただ、注目の原発の扱い方。確かに原発の危険性は描いている。原発は上空からの攻撃に弱く。ボーリングのボールひとつ落とすだけで大惨事となると言われている。まして巨大ヘリコプターが落ちれば大変なことだ。

その危険性を描きながらも、物語は原発を批判するのではなく、危険を見て見ぬ振りをする人々への批判へと展開する。さらに小学生のいじめ問題にスライド。次第に原発の危険性は物語が外れ、それを必死に守ろうとする原発職員たちと警察や関係者の活躍が描かれる。

この辺はバランスを取ったと思えた。311以降に原発は安全だ!といっても説得力がない。そして、危険なことは皆知っている。だから、危険性を描いても今なら原発を推進する人々は批判できない。でも、なんらかの圧力がかかって公開できない。宣伝できないということもある。そこで推進側も納得するように、心ある原発職員たちが活躍する物語も描いたのではないか?

もともと原作にあった部分かもしれないし、実際にも事故にならないように職員たちは命がけで安全を守ろうとしているだろう。しかし、それを描くことは「こんなに職員ががんばっているのだから、原発は安全だ」「前回は1000年に1度の津波だから事故ったけど、あんなにがんばれる人たちがいるんだから、次は大丈夫だ」と思う観客もいたかもしれない。

それに危険から守るという以前に、この1年以上、原発が全部止まっても電力危機にならなかったことを考えると、もともと原発は必要がない危険なものだることを多くの日本人が気付いている。なのに「こんなに職員は懸命に危険回避のために努力している」という物語を今、描く事にどういう意味があるのか?

その背景は原作小説が311以前に書かれたというところにあるだろう。原発の危険性を描きながらも、先に書いたように「原発は危険です。やめましょう!」という物語ではなく、テーマが逸れたように思えた「見て見ぬ振りをする人々」に対する批判こそが、原作のテーマだとしたら全てに筋が通る。

その意味で311を経験した我々が、今、「原発の危険性」を警鐘されてもすでに痛感していることだし、タブーであった原発を扱った映画と思ってみると、実は原発問題ではない「見て見ぬ人たち」を考えるテーマであり、肩すかしを食う訳である。そして、映画作家も、その辺のテーマを深く描くよりエンタテイメントとして仕上げようとしたと思える。

僕は原発問題に関心があり、まだまだ皆で考えて行く必要があると思っているので、その辺が物足りなかったのだ。宣伝で「標的は原発」と謳っているのはやはり単なるアピールのためだったのだと、痛感した次第だ。ただ、言えること。311以前ではこの原作を映画化することはできなかった。ヘリが原発に突っ込むなんて設定は絶対に許されなかっただろう。

しかし、現代は違う。原発は非情に危険ということを多くの人が実感している。だからこそ、この原作を映画化することができた。そして「見て見ぬ人たち」はまだまだ多いことは事実であり。小説のテーマである部分は考えねばならない。ただ、そのことが映画では物語とあまり結びついていない。やはり、この映画は純粋にエンタテイメントなのだ。

しかし、現代は違う。原発は非情に危険ということを多くの人が実感している。だからこそ、この原作を映画化することができた。そして「見て見ぬ人たち」はまだまだ多いことは事実であり。小説のテーマである部分は考えねばならないだろう。ただ、そのことが映画では物語とあまり結びついていない。大手映画会社にとって本当の意味での原発問題を描くことは今もタブーなのだ。

ただ、この映画に「原発問題が描けていない」というのは当て外れ、もともとエンタテイメントとして作れた映画なのである。




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