SSブログ

永田よしのりの映画講座~自分の好きな映画を応援するためには~ [映画業界物語]

200811071672.jpg

 by 永田よしのり(映画文筆家)

 映画宣伝にお金がかかるのことは前回に書いた。

 ただ、最もその映画を劇場で観る一般の人たちによってでしか出来ない宣伝方法というものがある。
 その映画があまり一般的に知られていなくても、自分たちが劇場窓口でチケットを買い、そこから劇場でかけられる日数が増えていけば、より一般の人たちの目にその映画は触れる機会が多くなる。そこで自分たちが気に入っていたその映画を、最初は知らなかった他の観客たちが気に入ってくれたとしたらどうだろう?

 もしかしたらその映画は口コミの話題が拡散して、劇場に人が来るようになり、とんでもない興行成績を稼ぎだすことだって有り得るのだ。

 ちょっと違う比喩だが、日本人は世界的に行列に並ぶのが苦にならない人種なのだそうだ。しかも行列に並ぶことによってステータス感を感じる民族なのだって。変な民族だ。でも、並ぶことで時間を浪費しているとは思わないのだから、そこで並んで何かを得ることの方に価値を見いだすのだろう。

 まあ、僕は行列に並ぶのは大っ嫌いなので、劇場試写などでも1人で行っている時は絶対に列に並ばない(何人か、もしくは担当編集者と連れ立って行く時には一緒に並ぶ。そこまで僕は意固地ではない)。
 例えば1時間も並ぶなら他の場所で他のことが出来るからだ。人の行列が動き始めてその終わりが見えてから、列につく。それで画面が多少見づらい場所でも構わない。

 まあ、話は違う方向に行ってしまったので、閑話休題。

200807131511.jpg

 さてさて。映画上映の話だった。

 つまり前売り券がたくさん売れている事実があれば、映画館で1日数回の上映が決まっていくし、公開日数も増えていく、という実に単純明快な話は理解していただけただろうか。

 自分の気に入っている、これから公開される映画があるならば、まずは劇場窓口で前売り券を購入すること。

 それがその映画の寿命を延ばしたり、映画自体にステイタスをつけていくことになるのである。
 興行というものにあまりロマンはないが、そこから先、映画が公開されてからは、その映画の持つ力でロマンが生まれていく可能性は充分にある。

 その手助けをするには、まずその映画の興行を上げていかなくてはならない。その先鞭が実は劇場窓口での前売り券購入だということは理解していただけたと思う。

 そして、その先、その映画に付加価値を付けていくのも、やはり映画を観た人でしか出来ないことなのだ。

 映画を成長させていくのは、結局その映画を観た人でしか出来ないことであり、その力とは劇場で映画を観て、その感動や面白さをその人たちが自分たち以外の外側に伝えていくことなのだ。 

 それが出来るのは、映画を観るためにお金を払って、その映画を観るために時間を作っている人でなければいけない。

 本当は僕らのように映画を試写で観て、なんだかんだ言っている者は、ただの映画たかりのようなもの。映画がなければ何の存在価値もない。

 200809021574.jpg

 現に2011年の春からしばらくは映画のお仕事は数カ月なかった。人々は余暇に当てている時間なんてなかったし、映画のことを気にして過ごす必要性がなかったからだ。

 日々を生きる中で最低限必要なことを選んで取捨選択していけば、趣味の世界からまず削減されていくのは自明の理。
 
 そんな世界で生きているのには、多分他のことで生きる選択肢が思い当たらないから。
 でも、僕は自分を映画評論家などとは思わない。

 ただ、多分、一般の人たちよりは何十倍も映画を観てきただろうから、その中で発見した映画論を示しているだけのこと。

 そして、その映画について語ることで、映画がより広がっていけばいいなあ、と思っているだけなのだ。

 今回のように、映画が映画館で上映される仕組みも、一般の人たちには知らないことだろうと思う。
 そうしたことは、多分あまりメディアには書かれないことだろうし、気軽に興味のある映画を映画館に休日などに観に行く人には、考えもしないことかもしれない。

 ただ、知らないよりは知っていた方がいいはず。

 そして、自分の好きな映画が、より長く映画館で上映されるために出来ることが自分たちにもあるのだと知って欲しかったのだ。

 映画は、劇場でお金を払って観ている人が育てていける(それがその人にとって生涯愛する作品になったりもする)ものなのだと、僕は思っているのだ。 


m_10460181_802083253199314_5461131442902814349_n-ed9e9.jpg
 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。