永田よしのりの映画講座①〜上映スケジュールありきの映画館?〜 [映画業界物語]
「向日葵の丘」撮影ルポでお馴染み、映画文筆家の永田よしのりさんの記事。
映画がいかにして映画館で上映されるか? 当たり前だと思っている裏にこんなことが!
という記事。映画業界のシステム。かなり理不尽なものがあるが、それを記事にして
紹介してくれる関係者はなかなかいない。しかし、作品への愛があれば、その辺の問題点を
明らかにして、変えて行く必要がある。そんな思いある記事。許可を得て転載させてもらう。
ぜひ、読んでほしい。
~上映スケジュールありきの映画館~
by 永田よしのり(映画文筆家)
読者の方々はこんな疑問をお持ちではないだろうか?
「なんで、この映画は1日4回かかっているのに、この映画は朝だけとか、夜だけ1回なんだろう?」とか、「同じ頃に始まったはずなのに、この映画はずっと上映してても、あの映画はもうやってないんだろう?」
なんて思うこと、たまにあるはず。
映画というのは、個人個人に好き好きがあるし、どんなジャンルの映画が好きであっても、また好きじゃなくても当たり前。
むしろ、百人が百人に面白い! と思われる映画を見つける方が難しいもの。
だから、自分の好きそうな映画が長く上映されているとちょっと嬉しい気分になるが、逆にすぐに打ち切られていたりすると悲しい気分になったりもする(自分には直接的に関係なくてもね)。
さて、ではここで映画館で映画が上映される仕組みを簡単に解説していこう。
映画は製作されてから映画館で上映されるまでにけっこうな時間がかかる。
例えば、2014年の春に撮影されたものでも、その後に編集や音響、細かい直しなどを経て、劇場で上映出来るカタチになるまでに半年くらいはすぐに過ぎてしまう(経たをしたら数年先なんてことも。それでも上映されればいいが、タイミングを逃してしまい上映されずに終わるなんてことも)。
そこからすぐに劇場で上映なんてことはまずない。
僕らマスコミにいる者は、そうして映画が出来上がってから宣伝の一環のために試写というものがあるわけで、まず観ないことには何も言えないから、なるべく試写には行くわけだ。
それでも、例えば人気のあるアニメーション映画(ジブリ作品とか細田作品や、「エヴァ」などの認知度があるものを例にしたとして)などは、なかなか作品が仕上がらずに、劇場公開ぎりぎりまで作業しているために、試写を観ることが出来ない、ということもままある。
ということは作品が出来上がると、僕らが試写を観る時間もないまますぐに劇場で映画は上映されるわけで、それはすなわち、作品にはまず、絶対に動かせないスケジュールありきだということが分かろう。
前述したように作品が出来上がってから数カ月、1年先に上映というものとは最初から上映のための仕組みが違うわけだ。
こうした例はけして珍しいものではない。
つまり、映画館で上映される作品には全てスケジュールというものがあるわけだ。
そしてスケジュールこそが、映画が上映されるうえで、映画館が最も最優先することでもある。
例えば、来年の8月に公開するために、製作を間に合わせなければならない、という縛りがまず作品にはあるわけで。
つまり、映画館のスケジュール次第で映画は製作されているわけだ。だが、それは大手プログラム・ピクチャーだけのこと。
東宝、東映、松竹、といった邦画3社、ワーナー、フォックス、パラマウント、ソニー、ディズニー、ギャガ、東宝東和といったあたりが、まずそうだろう。
ということは必然的にそういった大手の映画会社が配給・宣伝する映画は1日何回も劇場でかかることになる。これらを普通の観客は映画の普通興行の形だとまず思うわけだ。
しかしながら、映画は現在年間で800本以上が製作・公開されている現状がここ数年ある。
800本もの映画を1年365日で劇場で順番にかけるなんてことは普通ありえないし、なかなかに大変。
そこで、映画を劇場で公開するために様々な苦労や、やりとり、かけひきが製作・宣伝サイドと映画館との間で行われることになるのだ。
(つづく)
2015-07-13 10:34
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