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映画「向日葵の丘 1983年・夏」撮影現場ルポ その21 [撮影ルポ]

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映画「向日葵の丘 1983年・夏」撮影現場ルポ その21

by 永田よしのり(映画文筆家)

 5月3日。午前中から金谷商工会議所の一室を借りて、今日から撮影に入る津川雅彦(俳優歴60年にもなろうという大ベテラン俳優/太田監督の「青い青い空」に、実兄の長門裕之さんが出演した縁もあり、今回のか出演となった)の衣装合わせが行われる。
 いくつかの衣装をピックアップして、その場で何着かを着てみる。津川の役は、劇中に高校生・多香子らが通っている映画館・かもめ座の梶原支配人役。津川自身も「この服とかがいいんじゃないの?」と、監督らと意見交換しながら、映画館支配人という役どころに似合うような服がチョイスされる。
 津川は「まずは自分の芝居がメイン。衣装は自分の芝居の手助けをしてくれるもの」「着ているものの好みでキャラクターの統一感を出したいね」と、言う。
 そんな発言を受けて、衣装にはカウボーイ・スタイルの服など4着、腕時計や靴も合わせていく。そんな津川の衣装合わせを、多香子の父親役・並樹史朗も見学に来る。並樹は「今日の撮影現場も見学に行きたいんだ」と言っていた。
 衣装合わせと共に、津川からは監督に劇中での細かいリアクションや、小道具の使い方、かもめ座内部の導線などに関しても質問している。衣装合わせの時点から、すでに撮影現場のことも考えているのだ。
 衣装合わせが終了した後は、家山地区にある映画館かもめ座に移動。

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すでに美術スタッフが撮影場所の建物を映画館へと装飾を終えており、看板、外観からロビーまで、すっかり飾り込まれている。そこが今でも映画館として営業していると言われてもおかしくないくらいだ。
 ここでは、かもめ座の全景から撮影、ロビー内部、階段、なども撮影される。そして俳優陣が入っての撮影。
 シーン数としては5シーンほど。梶原支配人が出演するシーンを重点的に撮影されていく。
 ここではかもめ座支配人のスタッフとして働く孫娘・信子役として、市民俳優から選出されたMさんも参加。台詞のある芝居がある。撮影前に「緊張している」と言っていたが、そんな姿は微塵も見せない様子で、見事に信子役を演じている。
 最初のシーン撮影から、台本では3ページちょっとある長めのシーン。高校生・多香子、みどりらが、かもめ座にやって来て、ロビーで、梶原支配人と好きな映画について話す、というシーンだ。
 撮影が始まる前に撮影スタッフは「大人の俳優たちがメインに入って来てから、撮影の進み具合が早くなってきている。今日も頑張って進行させたいね」という、言葉も。
 ロビーにも美術スタッフらの奮闘の後が見てとれる。

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 カウンターが作り込まれ、壁には当時公開されていたポスターや、名画のポスターが。売店のショーケースには映画雑誌にパンフレット、瓶コーラやラムネ、ポップコーンなども。
 それらの値段も映画の舞台となる1983年プライス。コーラ、ポップコーンは100円、ラムネは50円と張り紙が。
 そんなタイムスリップした感覚にもなる場所で、この日の撮影はスタート。梶原支配人、高校生・多香子、みどりら3人のやりとりが軽妙に行われた。このシーンで、3人がどんな映画を好きなのか、が観客には分かるようになっているのだ。 
 そんな撮影現場とは別の場所では、美術スタッフ、浜松からの応援団らが、午後からの撮影に使う小道具などを用意している。2階の屋根の部分で作業しているスタッフもいる。
 本編撮影中でも、スタッフは様々な場所で撮影準備のための作業をしているのだ(もちろん撮影本番中は手を止める)。

 こうした動きは常に次の撮影の用意をしているということであり、そうした準備の様子は、観客が観る映画本編には写ることはない。しかしながら、常に無駄なく展開を考えているスタッフがいることで、撮影はスムーズに進み、現場の空気感もスタッフそれぞれの信頼感へと繋がっていくのではないだろうか(つづく)


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