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映画に愛のない人に映画に関わる資格はない? [映画業界物語]

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今回、本編を書き出し4分割してDVDにしたのは、

音楽家さんに映像を見てもらうためだ。すでにシナリオは撮影前にお渡しして読んでもらっている。まだ、編集は完了していないが、どんな映像で、俳優たちがどんな芝居をし、どんな町で撮影しているか?を伝えて、曲作りの準備をしてもらう。

日本映画界ではなぜか音楽が軽く扱われがちだが、僕は出来上がった映画の50%は音楽の力とさえ思える。「スターウォーズ」や「インディジョーンズ」のシリーズを考えてもらえれば分かるが、あれら映画にジョン・ウイリアムスの音楽がなければどうなっていたか?そう考えるのだ。映像+音楽=2、ではなく、映像×音楽=100になるのが映画なのである。

その音楽家さんに見てもらうために、

粗編の終わった映像を書き出し、DVDにして送るための作業をここ数日していたのだ。そして毎回、この時期になると思い出すP(プロデュサー)がいる。基本、このような送り作業やスタッフとの連絡はPがするのだが、音楽家に映画の映像を送るとき、そのPはオリジナルの美しい画質が伝わるDVD(ハイビジョン画質)ではなく、映像データを圧縮したものを送信したのだ。

当然、画質は落ちる。2時間もある映画をネットで送信できるほど圧縮したのだから目も当てられない汚い画質である。美しい映像をあえて汚くして送るなんて、どういう意識だ!と問いつめると、「DVDに書き出して、郵送すると手間がかかって面倒だから」という。さらに「音楽を作るのに画質は関係ないでしょう? どのシーンで音楽が入るか? その位置が確認できれば十分ですよ」というので、さらに頭に来た!

まったく分かっていない。

音楽家はアーティストだ。美しい映像を見れば感動し、その映像に相応しい美しい音楽を書こうとする。真っ赤な夕陽や真っ青な海や空。それら美しい映像がクリエーターの創作意欲を掻き立てるのだ。なのに、圧縮された映像で薄汚く滲んだ夕陽や濁ったような海を見せられたのでは、それなりの音楽しか生まれ来ない。

そのPの中では、音楽家に映画の映像を見せるということは、どの位置に音楽を入れるか?という業務連絡でしかないのだ。怒鳴りつけたい気分だったが、年配の人なので、我慢して分かるように説明した。郵送が面倒といっても、社員がいるのだから、誰かに届けさせればいいのだ。

数週間後。詰め編集は完了。

カラコレ(カラーや明るさの調整)をして、さらに美しくなった映像。いよいよ、音楽家さんにその映像を見て作曲してもらうのだ。今回はさすがのPもDVDで映像を送った。が、なんとカラコレ前の映像を送ったのだ!!!!なんで、より美しい映像があるのに、それ以前の映像を送るのか? さすがに激怒して、送り直すようにいうと、今度はカラコレされた映像をまたまた圧縮してネットで送信してしまったのだ。

ここまで来ると呆れて何もいえない。いくら年配で頭が固いといっても、注意したことをなぜ繰り返すのか? これはクリエーターの気持ちが分からないとか、手間がかかり面倒とかではなく、映画に対する愛がないのだろう。美しい映像を音楽家さんに見せて美しい曲を書いてもらおうという気持ちがないということは、スタッフやキャストに対しても、よりよい映画を、よりよい演技をしてもらうための気配りや段取りもしていないということ。

より良い映画を作ろうという意識がないのだろう。

映画を単なる製品としか思っていないのか? いや、製品でもそれを作る人たちには愛情がある。食品でも、電化製品でも、皆、愛情を込めて作る。大切な行程を面倒だから、関係ないからと疎かにしない。で、思ったのは、彼だけでなく、多くの映画会社では同じような発想の人がたくさんいて、それが日本映画を駄目にしてしまったのではないか? 実際、そのPが関わった映画は誰も知らないものばかり。

圧縮された汚い映像を見れば音楽家はやる気をなくし、その事実を知ったカメラマンも失望する。当然、監督は激怒する。「面倒、金がかかる、手間がかかる」というだけで、手抜きをするPでは、スタッフやキャストも真剣に仕事をしなくなる。「もらったギャラの分だけ仕事すればいいや!」それがある時期からの日本映画界の実状ではないか? 

アメリカで自動車産業が衰退したのも同じ背景。

生産者が車に対する愛情をなくし、欠陥だらけのものを作り続けたから。それに対して日本はもの凄い情熱を注いで車作りを続け、やがて自動車王国アメリカを追い抜いたのだ。何事も同じ。ただ、日本の映画界。先のような人がまだまだ多い。だから、もう僕の映画ではPを雇わず、僕自身がPを兼任する。だから、DVDも自分で焼き、音楽家さんへ自分で郵送する。だから、休息の間もなく作業の連続なのだ。

でも、それで音楽家さんがいい曲を書いてくれれば嬉しい。どの業界も同じ。自分が作るものに愛情の無い人、手間を惜しむ人は駄目。車でも、食品でも、映画でも同じなのだ。


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