現代の映画の役割。娯楽だけではなく、大切なことを伝えること。 [【再掲載】]
1980年代。映画は現実逃避の手段だった。
辛い世の中。2時間の間、現実を離れ宇宙を旅し、悪い奴らをやっつけて、イケメン男性や美女と恋をする。ハラハラ、どきどき、笑って、泣いて、感動する。そして映画館を出れば、現実に戻り、また「明日もがんばろう」と思うための応援メディアとしての役割が大きかった。
その後、90年代に入り、バブル崩壊。不況が10年以上も続く。2010年代に入ると、311。原発問題、景気問題、法改正、集団的自衛権等、テレビや新聞は本当ことを伝えず、戦争の足音さえ聞こえてくる。時代は悪い方向に進んでいるように思えてる。未来が見えない。希望が感じられない。そんな時代の中で映画の役割も変わってきた。
80年代は「辛い!」と思っても、
どうにか生活はできた。まじめに勉強して、会社に入り、しっかり仕事をすれば家族は守れた。だから、仕事が辛い、生活が苦しいといっても2時間映画で現実逃避すれば、また、がんばろうと思えたのだ。が、今は違う。2時間の現実逃避では何も解決しない。
豊かだったはずの日本で餓死する人がいる。信じていた会社が倒産。仕事をなくしてしまう。それ以前に就職できない。正社員になれない。ブラックな会社では過労死するまで働かされる。そんな時代に2時間の現実逃避をさせるだけの映画に意味を見いだしてはもらえない。
今の時代。映画は何を描くべきなのか?
僕がデビュー作「ストロベリーフィールズ」から描いて来たのは「親子に伝える大切なこと」。忘れがちな大切なことを物語を通してもう1度見つめることがテーマだった。そして、ここ最近はさらに、一歩進めて「幸せとは何か?」を考える。
日本人にとって、親にとって、子供にとって、家族にとって、
一番大切なことは何か? 何が人を幸せだと感じさせるのか? 幸せって何だっけ? そんなことをテーマに、ハラハラ、どきどき、感動して泣ける映画を作っている。
今回の映画「向日葵の丘」の舞台は1983年。
あの時代を振り返ることで、見つめることで、思い出すことで、忘れていた大切なことに気づくはずだ。パソコンもない、DVDもない、CDも、携帯さえもない時代。そんな時代にあって、今は失われたもの。それこそが「幸せ」なのだと思える。では、それは何か?
でも、説教臭い物語ではない。今回もめっちゃ泣ける作品になっている。ラスト1時間は、今回も涙の連続だ。その涙の中で、その感動の中で、あなたもきっと忘れていた大切なことを見つけるはずだ。