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感動的な物語を作るということー机の上で考えていてはダメ?? [映画業界物語]

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 前回、偉そうに「シナリオを読めない映画人」という記事を書いた。

 シナリオを読む力も大変だが、感動作になるシナリオを書くというのも大変だ。それ以前に物語を作るというのは戦い。頭の中で、あーしようか?こーしようか?とストーリーを作るだけでは観客を感動させるものはできないからだ。

 主人公がいて、可愛い女の子に出会って....実はその子は....とか考えて物語を作るのだが、どこかで聞いたようなそんなストーリーを書いてもなぜか?観客の心には届かない。誰でもストーリーを作ることは出来るのだが、感動作を書くのはむずかしい。

 物語というのはたいていボーイ・ミーツ・ガールで出来ている。恋のライバルが現れたり、2人を引き裂く存在がいたり、すれ違いがあったり、いろんな事件が起きて2人は結ばれない。それがパターン。なのに、ヒットするもの。しないもの。感動するもの。しないものが出て来る。何が違うのだろうか?

 テレビドラマで活躍する有名脚本家。

過去の作品のネタを気付かれないように、うまく使う人がいる。パクリというのは簡単だが、自分が作った物語に、そのネタをうまく脚色してはめ込んでいる。それはそれで実力だったりする。毎年、1クール。12話分ものシナリオを書いていると、持ちネタだけではすぐに尽きてしまうのも理由。

 でも、基本は自前のネタだ。子供の頃の経験とか、振られた思い出とか、体育祭での活躍とか、自分の経験を元にして書いた物語は伝わる。これが不思議なのだけど、頭で考えて作ったストーリーを話しても聞いている人はあまり共感も感動もしない。でも、自身が経験したこと。病気のことでも、失恋体験でも、その種の話をすると人は真剣に聞く。共感も感動もしてくれる。


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 聞き手がプロの業界人でなく一般の人でも、

それを見分ける能力を持っているのだ。作り話をすると具体的な根拠はなくても「何か、ヘンだな?」と思われる。試しに自身の本当に辛かった話を誰かにしてみてほしい。それが事実なら相手は必ず真剣に聞き、感銘してくれる。逆に、辛かった話を作って話してみてもいい。聞いた人はどこか????な感じを持つはずだ。人は誰でもその種の能力がある。

 それと事実が持つ「力強さ」「リアリティ」も大きい。「事実をもとにした物語」や「現実に起こった事件」のドラマ化は面白い。「現実は小説より奇なり」というが、頭で考えたドラマティックな物語より、現実に起こる事件の方が面白く、身につまされる。

 にも関わらず、多くの新人ライターは自身の話ではなく、過去に見た映画やドラマ。漫画のストーリーを焼き直したり、寄せ集めたりした物語を作ってしまう。何より、自分が経験したことを書くという基本を知らずに、あれこれ想像して書くのが物語だと思っているからだろう。

 もうひとつは、新人ライターは経験が少ない。

真面目に小中学校へ行き、高校へ進学。大学受験。あるいはシナリオ学校へ。日本人なら誰でも経験する教育を受け、平凡な人生を送って来た人が、その経験を書いてもやはり面白くない。高校時代は不良で暴れていたり、幼少期は極貧で生活が大変だったり、親がヤクザで特別な子供時代を送ったりと、人とは違った人生を送ることで、興味深い物語になるネタができる。

 ただ、そんな特別な経験がなくても、世の中を見る鋭い目があれば、社会の矛盾や政治の腐敗。教育問題をテーマに、自身の生活を物語にすることもできる。でも、そのためには時代を見つめる鋭い視線を鍛える経験がなければならない。平凡に生きていても、その目は育たない。そう考えて行くと、物語を作るというのは「いかなる人生を生きて来て、どんなふうに世の中を見ているか?」ということだと分かって来る。


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 それでも自身の経験を物語にするのは限りがある。

どんな特別な人生を送っていても10本20本もドラマは作れない。だから、次のステップは取材すること。机の上で想像するのではなく、いろんな人から話を聞く。実際に起こった事件を調べる。そうすると、頭で考えていては絶対に思いつかないドラマに出会うことができる。

 自身の経験で物語を作り、語り口がうまくなれば、人から聞いた話でも自分が経験したかのようにリアルに語ることができるようになる。それが物語を作るということだ。よくあるパターンの物語なら誰にでも作ることができる。でも、それでは観客は感動しない。リアリティも感じない。観客を泣かせ、共感させる物語を作るには、自分が経験したことをベースに作る。

 実際にあった話を取材して作ることが重要なのだ。

もちろん、SFやファンタジーという現実にありえない物語もあるが、基本は同じ。まだまだ、奥深いものがあるのだが、物語作りはその辺が大事なのだ。



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