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シナリオが読めない映画人ー多くがドラマ文法を理解していない? [映画業界物語]

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 物語を作るという仕事。映画であり、テレビドラマ、

漫画、小説。ただ、物語作りは車やテレビのような製品を作るのとは違う。そして、目に見えないルールがある。法則や定義もある。それが分からない人がなぜか?映画の世界には多い。

 映画を企画するのはP(プロデュサー)。ストーリー作りにも参加する。原作ものならすでに物語が出来ているからまだいいが、オリジナルのときはいろいろ揉める。日本映画のほとんどが原作ものということもあり、物語を作るという作業をあまり経験していないPが多いのが、揉める大きな理由と思えるのだが、「物語作り」を分かってない人が多い。

 Pだけではなく、監督でもそんな人が多い。

「主人公を***させようか?」とか「ライバルを***することにしょう」とかいう。そんなことを言い出せば、いろんな展開が可能となり収拾が付かなくなる。その手の人は作品のテーマを把握せず、個人的な希望を掲げているだけ。テーマを考えれば、展開の仕方は自ずと決まって来る。なのに「***してもいいんじゃないの?」とか素人のようなことを言い出す監督もいる。ドラマ文法というのを全く分かっていない。

 また、シナリオを読んで完成したイメージ

が想像できる人も非常に少ない。ま、想像力がないということだ。シナリオは小説とは違う。単純に読むだけではダメ。この役はどんな俳優が演じるか? 具体的な人をイメージして読まなければならない。カメラワークは? ロケ地は? 俳優の演技は? どんな音楽がどのシーンで流れるか? そこまで想像しなければならない。


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 例えば、菅野美穂がこの役を演じ、

涙ながらに台詞をいう。そこにピアノの曲が流れてくる。撮影場所は古都・京都の境内とか、考えると「おーーこれは泣けそうだ!」と思える。ロケ地が東京のビル街とか、音楽がエレキとか、別のものだと泣けなくなったりもする。そこまで想像して読むのがシナリオ。それを貧困な想像力でしか読めず「これじゃー泣けないよな」という人がとても多い。

 彼らが理解するのは「この原作は100万部売れているんですよ」

「***賞を受賞した」「この作家には若い女性ファンが多い」という言葉だけ。「だったら、その原作を映画化しよう!」という。要は読む力がないということ。

 そんなPたちがNOを突きつけたシナリオに関して「何がよくないんですか?」と訊いてみる。何が面白く、何が面白くない。面白くない原因は何か? キャラクターか? ストーリー展開か? 設定か? それを明確に言える人はなかなかいない。細かく訊いていくと、最後には「全てダメなんだよ!」と怒り出す。「これはベストセラー原作。だから映画化する」という安易な仕事をしていて読む力がないので、そのシナリオの世界やテイストを想像できない。理解できなかった。だから、「面白くない」と思っただけなのだ。正確にいうと「僕には分からない」ということが多い。

 ただ、シナリオを書く脚本家は

その辺を理解している。自身で物語を何本も作っているとドラマ文法が分かって来る。物語はテーマに向かって突き進むときに面白くなることを知っている。何本もシナリオを書いているプロはさすがにプロ。だが、監督たちにはその辺が分からない人が多い。

 僕も脚本家時代。その種の監督と何度か仕事をした。要はテーマに沿って物語を作らなければならないのに、その監督はテーマに興味がなく、別のことをしたい。その企画とは違うことをやりたい。それを「そーじゃないんだなあ」といって、自分のやりたい方向に向けようとしているだけなのだ。


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 そうなると、何がしたいか?分からないヘンな映画ができる。昔の角川映画でも若者向きに企画した作品で、若手の人気俳優が出て、原作も若い人に人気。若い人が聴くアーティストが主題歌なのに、監督が中年向けのドラマを作ってしまったことがある。当然、中途半端な作品。陳腐な映画になってしまった。日本映画はこんなケースがときどきある。

 ドラマ文法が分からないP。

テーマや企画を無視してやりたいことをやる監督ー(もちろん、それでいいものができればいいが、ラーメンの器にステーキを入れるようなもので、観客は???となる)そんな人たちの意見を入れてシナリオを書く脚本家。こうして、大金を注いだ大失敗作が作られる。今もそうだが「何で、こんな映画作ったの?」という作品はそんな背景なのだ。

 「この原作が何でこーなるの?」

というのも同じ。その原作に愛情も思い入れもない脚本家や監督。Pが自分がやりたい別のことを、作品の中でやってしまうのだ。日本アニメヒーローものの映画化なのに、「ダークナイト」や「アイアンマン」をやろうとしたものが数年前にあった。原作ファンから大ブーイングを買った。話は少し逸れたが、全ての原因はドラマ文法が分からないPが作品を統括できていないということ。だから、監督が暴走する。だから、おかしな物語になる。


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 もちろん、優秀なPもいるが、ダメな方が多い。

なぜか? その種の勉強や経験を積む機会がないからだ。多くのPは現場で製作の仕事をする。それは大事なことだが、それだけでは不十分。物語とは何か?を把握するには、撮影現場だけではダメ。テレビの世界ではPに昇進する前に、シナリオ講座を受講させるという局もある。だが、1年ほど現場経験をしてすぐPになるビデオメーカーや製作会社が多い。

 仕事がキツいので上がどんどん辞めて行くので、1年も勤めればPになってしまう。肩書きが付くと不勉強な奴でも「俺はPだ。偉いんだ!」と勘違い。ドラマ文法も分からないのに暴走。そこから悲劇がスタート。実力ある脚本家のシナリオが不勉強のPの指摘で、改悪されてダメな作品になったのを何度も見た。僕も昔はそんな人たちと仕事をして散々な目に遭った。が、最近は見る目のある人たちがまわり多くいるので、助けられている。

 どんな有名俳優が出ても、莫大な製作費をかけて映画を作っても

脚本がダメなら、いい作品にはならない。その脚本の良さが分からなければ、シナリオを読む力、想像力がないと素晴らしいシナリオを見いだすことができない。そんな力のない人がPとなり、重役となり、決定権を持ってしまう。日本映画の最大の問題点なのだ....。


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