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映画監督には3通りのタイプがあるの? [映画業界物語]

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 映画監督には3通りのタイプがある。

 一番目が作家タイプ。自分のカラーを持ち。映画によって、自身のメッセージを発信。作品の中でテーマを描こうとする。多くの作品は自身で企画したものである。これが映画作家タイプ。日本でいうと、黒澤明監督や大林宣彦監督のような存在。

 2番目はプログラム・ピクチャー監督。与えられた仕事を自分なりのスタイルで料理して、エンタテイメントとして仕上げる。作家性は強くなく、主張やメッセージにはこだわらず職人技で勝負する。ハリウッドでいえば、トニースコットのような監督。

 そして3番目がディレクタータイプ。

 テレビディレクターに近く、与えられた仕事を卒なくこなす。作品に個性や主張はなく、予算内、期間内に、ある程度のレベルで無難な仕上がりを見せるタイプ。以上の3タイプに分けられる。最近、多く作られる製作委員会方式の場合は、②のプログラム・ピクチャー監督か、③のディレクタータイプが起用されることが多い。


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 この方式だと、出資した多くの企業の顔を立てることが作品のクオリティを上げるより重要なので、①の映画作家では揉めることが多い。なので、与えられたことを無難に仕上げる③のディレクタータイプが重宝される。

 しかし、映画作家タイプはよほどの知名度がないと仕事がない。

 なので、本来①のタイプであるのに、自分を殺し、メッセージや主張を控えて、与えられたことを無難にこなす仕事をする人も多い。「自主映画時代はいい作品を作ったのになあ」とか「デビュー作はよかったのに」と言われる監督はそんな人が多い。

 スポンサーやプロデュサーがあれこれ口を出してきても、「いや、俺はこんなふうにやりたいんだ!」と自分のカラーや主張を掲げると、嫌がられて、次から仕事がもらえない。なので、③のディレクタータイプや②のプログラム・ピクチャータイプに徹して演出するのである。

 だが、やはり、多くの人に支持されるヒット作を作るのは、やはり①の映画作家タイプである。巨匠と呼ばれる監督は皆、このタイプ。アメリカでも、日本でも同じだ。ただ、現在の日本映画は「面白い映画を作ろう」「感動作を見てもらおう」という気持ちより、人気漫画の原作を押さえ、多くの企業に出資させて、人気俳優を揃えるという映画作りが主流。

 誰一人。原作への愛はないのに、

 ベストセラーというだけで映画化。宣伝に何億もかけてテレビスポットを流す。だから、そこそこヒットするが、感動作にはならず、半年も経つと存在すら忘れられる。テレビ局が作る大作映画にその手の作品が多い。この場合の監督は単なる下請け仕事で、与えられたことを、それなりにすることが重要。作歌性も、主張も必要とされない。そこが現代の日本映画が面白くない背景である。

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 その昔、日本映画が世界レベルだった時代。

 なぜ、あの頃はあんなにレベルが高く、名作が量産されたか?を生前の黒澤明監督が答えている。「監督が一番撮りたいものを撮るからいいものができるんだよ」まさにその通りだろう。押しつけで、好きでもない作品を監督してもいいものはできない。①の映画作家タイプが活躍するには、今の時代はむずかしい。

 「主演はこの人! 原作はこれ。脇は主演俳優の事務所の人で固めて、主題歌は今人気の****。これでよろしくね?」と頼まれた作品では、やはりいいものはできないだろう。だから、1年に何本も撮るのは③のディレクタータイプが多くなる。その種の監督の名前をポスターで見るだけで、「あ、この映画は大したことはないな....」と分かってしまう。

 例え、大作映画の依頼が来ても、

 その種の映画だと、③タイプに徹せねばならない。仕事は苦痛なだけになるが、それなりのギャラはもらえる。それが出来る人は仕事が続くが、自身の「思い」や「カラー」は出せず。作品もあまり評価されない。自分のカラーを発揮できれば、いいものができるが、そのチャンスはなかなか来ない。それが日本映画の現状である。

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