SSブログ

大ヒット映画のシリーズ。続ける難しさ。新旧ファンの確執? [映画の話]

IMG_9507.JPG

 昨年暮れに映画の大ヒットシリーズの新作が3本公開された。どれも僕にとっては、長年見続けて来た思いがあるシリーズ。だが、面白い共通点と特徴を見つけた。それはのちほど紹介するとして、シリーズものについてまずは書かせてほしい。

 「スターウォーズ」シリーズの「フォースの覚醒」

 「007」シリーズの「スペクター」

 「ロッキー」シリーズの「クリード」

 シリーズもの。或いは続編というのはとても難しい。あ、物語を作るという意味で。映画会社としてはシリーズものは宣伝しやすいし、そこそこヒットするので、ありがたい存在。でも、シナリオ作家にとっては苦しい戦い。前作の評価が高ければ高いほど、少しいいくらいでは「前作の方がよかった」といわれる。そして、どーしても前作の繰り返しになりがち。新しいことをすると、「前作のイメージを壊す」と批判される。

 僕の場合。これまでに4本の監督作品があり、(テレビドラマやVシネマを別にして)全てオリジナル・脚本で自身で書いているのだが、幸い続編はない。個人的に続編というのは、面白くならないし、僕が書いた作品は1本で完結している。いくら評価が高くても、完結したものの続編を作っては面白いものはできない。スピルバーグは「インディジョーンズ」はシリーズ化しても、「ET」の続編を作らないのはそれが理由だ。ロン・ワードの「コクーン」も1作目は素晴らしかったが、2作目は最低。できれば作らないでほしかった。だから、ロンハワードは監督を降りたのだろう。

 観客の期待が大きいこともあるが、

 すでに完結した内容の続きを作っても、意味がなく失敗しがち。だが、「インディ・ジョーンズ」のようなヒーローものは、シリーズ化しやすい。新たな場所で、新たな敵と戦う話にすれば、量産できる。「007」もそのひとつ。だから、20本以上も作られている。「007」が1回完結なのに対して「スターウォーズ」は長い長い物語を分割して見せているという形。「ロードオブ・ザ・リング」シリーズもそうだが、そこが「007」や「インディ」と違うところ。

IMG_9510.JPG

 さて、シリーズものが難しい点。

 もうひとつある。今回の「スターウォーズ」がまさにそうだが、過去作のファンの幅が広くて賛否両論になる。分かりやすくいうと、エピソード4.5.6のファンと1、2、3のファンに分かれることだ。旧三部作のファンは今回の「フォースの覚醒」を歓迎したが、新三部作のファンは不満。もともと、ルーカスは挑戦する人で、実験映画志向。だから、「THX1138」のような映画を監督していた。だから、新三部作は旧三部作とは違うアプローチが多い。

 だが、旧三部作を愛する人たちには自分たちのイメージが壊されて批判が続出。たぶん、そこを気にした監督のJJが旧三部作の世界観で今回のエピソードを作っている。ディズニーとしても、その辺を守りたくてルーカスをチームから排除して製作した。逆に今回のエピソードを批判するのは新三部作のファン。ルーカスの新しいことに挑戦するスタイルを支持する人たち。「今回はエピソード4の焼き直し!」と不満が溢れる。確かにその通りだが、JJとディズニーはそれは目指したのである。

 そんなふうに人気シリーズになればなるほど、ファンの幅は増え、必ず不満を持つ人たちが出て来る。ただ、新しい挑戦をしなければ、新しいファンは獲得できない。同じ繰り返しをしていると、ファンは飽きてしまい離れて行く。でも、全く新しいものにすると、固定ファンが離れて行く。なかなか、むずかしい。

IMG_9509.JPG

 その意味で大失敗したのが

 今回の「007」ではないか? 「スペクター」というタイトルからして、ファンとしてはワクワクするのだが、劇中で何の組織なのか? よく分からない。ま、悪の秘密結社なのだが、おしゃれな会議室で、観覧OKで打ち合わせするって、どんな秘密組織? とか思えるし、60年代には成立した悪の秘密結社も、現代では少々、奇異な感じがする。今は秘密組織よりイスラム国とかテロリストの方がリアルだし、怖い。でも、それらを敵にすると、「ダイハード」や「24」と同じになる。古いファンはやはりボンドと秘密結社との戦いを期待するだろう。

 でも、現代では成立し辛い。だからこそ、実態がよく分からない、あやふやな描き方をしてお茶を濁したのではないか? それでもタイトルは「スペクター」にすることで、ファンは喜ぶ。だから、今回はサービスいっぱい。アストンマーチン、ブロフェイルド、顔の傷、ペルシャ猫。ファンが見ればおーーという描写がたくさんある。あ、ドライマティーニ。ノーシェイクも! つまり「スペクター」も古いファンの志向を優先して、新しい挑戦をしなかったタイプの映画。

 それを優先したために、過去のスタイルでは現代に一致しないところが続出。物語として、うまく出来上がらなかったのだと思える。そもそも、スペクターの存在は必要ないストーリー。要は英国情報部の存続を賭けた、首脳部の戦いが今回の物語なのだ。それでは古くからのファンを惹き付けられないので、スペクターという存在を無理やり入れた感がある。あと、権利問題で「スペクター」という言葉を使えるようになったということもあるようだけど。

 その意味で「スターウォーズ」と「007」は

 古いファンの志向を優先した。さて、残るひとつ。「ロッキー」シリーズの「クリード」はどうか? 実はこちらも古いファンのことを気遣っているのが、先の2つとは違う。とてもうまい。記事がかなり長くなったので、それは別の機会に書かせてもらう。

IMG_9508.JPG

 あと、実は昨年はシリーズもの大会と思えるほど、その手が多かった。「ターミネーター」「ジュラシックワールド」「マッドマックス」「ミッション・インポシブル」その辺も機会を見て紹介する。

(つづく)



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。