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「私の実力を認めてくれ!と主張する前に、人のために何ができるか?を考えることが大事 [今年アクセス数500超えの記事紹介]

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【私の実力を認めてくれ!と主張する前に、人のために何ができるか?を考えることが大事】

劇団員というのは大変だ。食って行ける劇団はいくつかしかなく、ほとんどがバイトで生活を支えいる人ばかり。公演時は1ヶ月前からバイトを休み、ノーギャラの上に、チケットを100枚ほど売るのがノルマ。

しかし、毎年行われる公演にさえ2年に1回しか出演できない。そんな劇団に20代のA子がいる。月18万ほど稼ぐバイト料から毎月1万ずつ貯金して、20万溜まったら、芝居に出れるというのだ。

その劇団は小さく、観客のチケット代だけでは赤字。劇場を借り、ポスターやチラシを作り、衣装や小道具を借りると、持ち出しになる。だから、劇団員が1人20万ずつ出し合って公演をする。その金がないと、出演することができない。だが、月18万円で毎月1万の貯金は大変。月1−2回の飲み会に出るともうアウト。節約して生活しても2年かかる。

そのA子の夢はプロの俳優になること。いつか映画やテレビドラマに出られるようになりたい。そう思ってがんばっている。そのA子が以前、僕が講師をするワークショップに来ていたこともあり、その劇団の芝居を見た。抜群にうまくはないが、がんばっている。

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その年に撮影する僕の映画に出演しないか?と訊いてみた。エキストラに毛の生えた役だが、台詞がある。ただ、製作費も厳しいのでノーギャラ。それれでも、撮影現場を経験できるし、プロの俳優たちと並んで芝居ができる。勉強になるはずだ。が、彼女は不満そうにこう訊いた。

「ノーギャラって、どういう意味ですか?」

ノーギャラはノーギャラ。出演料がないという意味だ。それは理解しているはずだ。要は「プロの仕事に出るんだから、それはないでしょう?」という意味だ。もちろん、余裕があればギャラは出したい。が、僕の映画は毎回、ギリギリでやっている。いや、僕だけではない。今、ドラマも映画も本当に節約に節約して撮影をする。プロでも小さな役はバイト料と変わらぬ額だったりする。それでも1本の映画に出演できると、皆、全身全霊で芝居する。

なのに、実績もない、有名でもない、彼女がギャラを要求していた。ここで本来はアウトだが、自分の立場を勘違いしているのではなく、プロの世界を知らないのだと思い、説明した。映画の世界はバイトではない。1時間900円とかで仕事をする世界ではない。実績と実力がものを言う。実力があっても、なかなか認められない。俳優事務所からは「タダでもいいので、ウチの子たちを何かの役で出してください」とよくいわれる。それでも出れない。

小さな実績を積み重ねて、いろんな人と知り合い、チャンスをもらって、階段を上って行く仕事。いや、今は仕事と捉えてはいけない。チャンスだと思ってほしい。僕にできるのは、小さな役だけど台詞もある。勉強になる。A子なら出来る役なので、お願いした。と話した。


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彼女は不満そうだったが、納得。出演した。その後、現場はとても勉強になったと喜んでいた。で、映画公開のとき。劇団員の彼女ならチケットを売るのは得意だろうと頼んだら「友達は皆、忙しいので、映画見れるかどうか?分からないし、買ってもらえません」と断られた。なぜ、自分が出ている映画を同じ劇団員や友達に見てもらおうと思わないのだろう?さらに、試写会に呼んでもスタッフにこんなことを言ってる。

「****さんの芝居がよくなかったなあ。もっと力を抜いてやった方がいいですね」

ちょっと待て、その俳優はプロだぞ。素人のお前が何をいうの? いや、100歩譲って、その通りだとしても、それをスタッフにいってどうすんの? もしかしたら、何かの機会にそのスタッフが別の映画で声をかけてくれるかもしれないのに、一緒に演じた俳優を批判していては「この子何なんだ?」と思われて終わり。

あとで呼びつけて説教したら、反省していたけど、一連の行動は全て同じ背景だ。自分の行動や発言がどう思われるか?を考えていない。一般の素人がいうなら許される。しかし、プロの俳優をめざし、劇団で舞台に立ち。映画の撮影にも出演。台詞ある役を演じている。それはもうプロのスタートラインに立ったのと同じ。にも関わらず、素人気分なのだ。チケットをたくさん売れば、映画会社にも喜ばれる。

「へーあの子、チケット100枚も売ったのか? また、何かあれば声かけて上げようよ」

と言われるだろう。儲けのことではない。そのくらいに作品に対する思いがあり、多くの人に見てほしいという思いを感じるからだ。が、彼女は訳の分からない理由でチケットを売ろうともしなかった。

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初出演なのにノーギャラと言われると不満を表す。そこで声をかけられたことにまず感謝を示すのに「えー?」という顔をしてしまう。そして試写会での感想。どれをどうとっても「やる気」が見えない。不遇の身ではあるが、どこかで「私は出来る!」という自負があるのかもしれない。しかし、彼女はまだプロではなく、その実力を世間も業界も認めてはいない。それなら、まわりにいる応援してくれる人たちに理解してもらう努力をすべきなのだが、いつも空回り。

実はそんな俳優の卵は多い。勘違い。うぬぼれ。気がまわらない。自分の立場が分かっていない。応援してくれる人に不義理をする。芸能界はコネと金だなんて言われるが、それだけではない。一生懸命がんばる人は応援されるし、成功している人は皆、もの凄い気遣いをする。仲間のために神経をすり減らす。

実は他の世界も同じだろう。初心者は「実力があれば認められる」と勘違いしがちだが「私を評価してくれ!」と言う前に、「いかに人のために役に立つか?」を伝えること大事なのだと思える。


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