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【映画公開時の舞台挨拶。俳優さんはいくらもらえるの?】 [映画業界物語]

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【映画公開時の舞台挨拶。俳優さんはいくらもらえるの?】

映画が公開されるとき、大きな都市ではキャストが勢揃い。華やかな舞台挨拶が行われる。ワイドショー等でもよく紹介されるので、実際に行ったことはなくても、テレビで見たことがあるだろう。「向日葵の丘」でも東京初日8月22日には常盤貴子さんを始め、大人組とヤング組の6人が勢揃い。多くのマスコミも詰めかけて、盛り上がった。

あのときは人気者勢揃いということもあり、オンラインでのチケット発売からわずか6分で完売。ま、どんな舞台挨拶でも、人気俳優がナマで見られるとあって、数分で完売すると映画館スタッフに聞いた。いつもはスクリーンでしか見れない俳優たちが、実際に観客の前に現れるのだから多くの人がチケットを取ろうとする。

そんな舞台挨拶は誰が企画し、どのようにして行われるのか? これは意外と知らない人が多い。「映画館が俳優を呼ぶんだよ」と思っている人も多いが、そうではない。今回はその辺を説明しよう。

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まず、東京公開初日に舞台挨拶があるのが定番。多くの皆さんの協力で映画が完成。無事に公開されました!という御客様への報告の意味もある。そして、マスコミが来てくれるから。ワイドショーやバラエティ番組で紹介。スポーツ紙や雑誌に掲載。多くの人にその映画が公開されたことを伝達できるからだ。要は宣伝になる。

もうひとつは「人気俳優がナマで見られる!」ということで、観客がたくさん来てくれる。初日が大入り。満員御礼になることは大事。その日、たくさんの客を入れるということも大事だが、舞台挨拶をすることで、その日来ていない人たちにもアピールできる。というのも、初日に来た観客も映画の話題だけでなく、舞台挨拶についても、あちこちで語ってくれる。そこから口コミがスタートする。

その日の客席を満杯にするだけでなく、舞台挨拶をすることで明日からのお客にもアピールするのだ。それを公開の真ん中や最終日に舞台挨拶をやっても、声が広がる頃に上映終了となってしまう。だから、初日にやらねばならない。映画というのは最初が肝心。スタートして徐々に盛り上げてという方法論では駄目。初日がガラガラだが、口コミで広がり、客が増えてくるというのはありえない。

初日満員でスタートして、あとは数が減る一方だが、その減少幅を少なくしながら、いかにロングランするかが、映画では勝負なのだ。ま、極々稀に、途中から人気が出てくる作品もあるが、それは何か事件やニュースがうまく絡んで注目された場合のみ。やはり映画は初日が勝負なのだ。その意味で初日に舞台挨拶をして盛り上げることが重要。あとあとまで効果が続く。

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基本、東京初日は舞台挨拶をするが、地方でも舞台挨拶は実施される。今回も金沢では田中美里さん。大阪、名古屋は藤田朋子さん。あと、横浜ではヤングみどり=藤井武美さん。十三では仲代奈緒さんが登壇。その全てに僕も参加した。基本、映画館側から配給会社に「うちでも舞台挨拶をしてください」との依頼から始まる。配給会社はキャストがその街で舞台挨拶することで、より多くの客が来てくれるかどうか?を判断。承諾する。

だから、キャストが来ても客がさして来ないであろう人口の少ない町では舞台挨拶をしない。場内ガラガラで舞台に立たされる俳優も気の毒。告知するのは配給会社の仕事。さらにキャストが出演する番組、ブログ等でも告知してもらって、アピール。旅費、宿泊費、食費は皆、配給会社が負担。映画館は出さない。少々、疑問あるシステムではあるが、それが映画界の習慣だ。

そして、キャストは1日かけて、その町まで行き、舞台挨拶をしても、ギャラは1円も出ない。一緒に登壇する監督も同じ。「えー何で?」と思うが、それも映画界の習慣。基本、俳優は舞台挨拶を始めとする宣伝は断ってもいい。それをなぜ、受けるか?というと、一生懸命演じて、素晴らしい作品が出来た。だから、それを1人でも多くの人に見てもらいたい!という思いからだ。監督も同じ。多くの人は登壇すればギャラがもらえると思いがちだが、実は皆ノーギャラで舞台挨拶を行う。

よく映画館公開終了後のイベント上映。自主上映のときに「俳優さんに来てほしいんですけど!」との連絡が、主催団体から来ることがあるが、それは舞台挨拶ではなく「営業」というカテゴリーに入り、かなり高額なギャラを払わねばならない。あくまでも、映画館上映時に「素敵な映画が出来たので、皆さん見てください!」という俳優の思いによって、舞台挨拶は実現する。

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それが映画の世界。昔からの習慣なのである。舞台挨拶だけではない。マスコミの取材も、バラエティ番組に出演しての告知も、基本ノーギャラ。全て俳優の好意だ。だから、ある映画のある主演女優さん。映画の出来が気に入らなくて、全ての宣伝を拒否したことがある。それもアリ。舞台挨拶は強制ではない。ただ、俳優たちが「金」のためでなく「映画」のために骨を折るというところが素敵だと思う。

自分たちが懸命に作った映画。その映画を見てほしい! そのために、大阪でも、名古屋でも行く。そのことで1人でも多くの人が映画に関心を持ってくれれば....という思いなのだ。監督業も同じ。以前の映画では数ヶ月に渡り、全国縦断舞台挨拶ツアーをしたが、ギャラは1円ももらっていない。でも、僕が映画館で登壇することで、観客が1人でも2人でも増え、地元でマスコミ取材を受け、映画の存在がアピールされる。それはありがたいこと。(数ヶ月。無収入であとは大変だったけど!!)

今の時代。何かというと金金金!という人が多い。1時間働いたから時給900円だとか。もちろん、正当な報酬はもらうべきだ。しかし、お金のためではなく、労力を費やす、時間をかけるということ。本当に自分が真剣になれることを時給換算するべきではない。お金では買えないものが、そこにあるのだから。舞台挨拶というのは、そんなひとつだと考える。


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