映画「向日葵の丘」撮影現場ルポ その29 ~雨の中、撮影は続く~ [撮影ルポ]

あと2話で完結!!
by 永田よしのり(映画文筆家)
5月5日も、もう夕方。
相変わらず雨は止むことなく降り続いている。
そんな中、かもめ座の周りには市民俳優たちが大挙集合して来ていた。その数およそ200人!
これから撮影されるシーンは、映画本編でも本当にラスト近くの場面。すっかり暗くなってきている場所に何本も照明のためのスタンドが立てられていく。
照明が点くと、その光の中に雨粒が落ちてくる様子がよく見える。 俳優たちも大人・多香子、大人・みどり、大人・エリカ、大人・将太らが集合。
俳優たちが現場に入ってくる度に、市民俳優たちからは「あっ、常盤さん!」とか、「別所さん格好いい!」などと声が上がる。
少しだけこの時に大人・将太役の別所さんと自分の役について話した。「ここでの撮影もそうだけど、前向きに妻のために何かできることを協力してあげたいという気持ちを、自分の表情や台詞の言い回しで出していきたいんですよね」と、実に爽やかに、かつ頼もしく語ってくれている。
現に大人・将太役の別所さんは、その言葉通りに、けして前面に出過ぎず、それでいて控えめすぎない演技をされているように僕はそれまでのシーンで感じていたので、それがこの時の発言で証明されたわけだ。
周囲もすっかり暗くなった午後7時過ぎに、本格的に撮影が開始。
かもめ座の前から脇の道まで、市民俳優の方々が一列になって並び始める。テレビドラマなどでよく見る画としてはクレーンを使った撮影で、並んでいる様子を上空から俯瞰で撮るような場面だが、ここにはクレーンなどはない。しかしながら、そうした道具を使わなくてもたくさんの人が並んでいる臨場感は、映画でしっかりと伝わるはず。
かもめ座の周囲にはスタッフや見物人も含めて、200人ほどの人がいる。雨足はかなり強くなってきている。
撮影が始まる前のテスト段階では、市民俳優の方々も傘をさして並んでいるが、本番の時は傘をたたむ。
その時に雨が小降りになるといいのだが。
演出部は市民俳優たちにこれからの撮影の流れや、各人たちの動きを説明していく。
そんな撮影前の様子などを、見物人たちは自分の携帯電話で撮影している姿があちこちに。
その行為を止めてもらうように、スタッフは一人一人に説明・お願いして回っている。
映画撮影の現場では、そうしたことはよく見られること。
一般の見物人たちは、映画撮影が珍しいだろうし、自分たちのトピックのひとつとして受け止めているから、写真撮影は当たり前のことと捉えているのだろう。
しかしながら、今、撮影されている映画は、これから世に出るものであり、まだ正式に宣伝活動もされていない作品。それを勝手に写真撮影して、例えばツイッターや個人のブログなどにアップすることは、無許可の行為であり、ある意味での違法行為にも成り得る、ということもある。
なのでこれを読んでいる方たちが、どこかで撮影現場に遭遇した時などは気をつけていただきたいと思う。
そんな中でも雨は無情に降り続いている。
5月とはいっても、夜の雨、外にずっと立っているのはかなり寒いはず。
それでもスタッフの説明通りに何度もリハーサル・テストを重ねる市民俳優たち。
大人・将太の劇中での挨拶台詞と共に、市民俳優の約100人がかもめ座の中に移動して行く。
それが何度も繰り返されていく。
田中美里演じる大人・みどりの乗る車イスの導線も、車輪が溝にハマって引っ掛かったりしないようにしっかりとチェック。
そんな中、雨が一瞬小降りに。
「さあ、行きましょう!」
と言う監督の声と共に、本番が始まる。
列に並んでいる市民俳優たちの列に藤田朋子演じる大人・エリカがその場のアドリブで元気に声をかけている。
その声に市民俳優のみなさんの顔にも笑顔が宿る。
それでも雨はまた強く降り始め、一旦の中断。
そして弱くなった時点でまた再開の繰り返しが続く。
雨中で何度も同じことを繰り返す撮影で、最初は元気だった市民俳優たちにも次第に集中力がなくなっていくのが分かる。
撮影スタッフは、ついにここである決断を下すことになるのだった。(つづく)

2015-07-31 11:18
nice!(0)
コメント(0)
トラックバック(0)
コメント 0