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映画「向日葵の丘 1983年・夏」撮影現場ルポ その28 [撮影ルポ]

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~常盤貴子と藤田朋子のツーショットが実現~
by 永田よしのり(映画文筆家)

 お昼からのバスでの移動撮影が終わった後は、島田市内のある喫茶店を借りての撮影に。
 お昼休みを挟んで、スタッフはすぐに移動。撮影の準備を進めていく(僕が後から到着した時にはすでに撮影の準備はほぼ完了していた。本当にこのスタッフの仕事の早さには驚かされる)。

 ここでのシーンは、映画の冒頭で、大人・多香子と大人・エリカが喫茶店で会話を交わす場面。

 つまり、大人・多香子演じる常盤貴子と、大人・エリカを演じる藤田朋子が初めてツー・ショットで登場する場面となるのだ。

 午後3時過ぎ、シックな店内に市民俳優の方たちも参加しての撮影が始まる。

 ここでの場面は2人だけの会話シーン。

 キャメラアングルなどのカット割りなどに、やや時間がかかる撮影となる(店内の一番いいポジションを監督と撮影監督が探しながら場所を決めていく。ポジションが決まれば、キャメラ位置や照明機材もその撮影に合わせて移動、確定していくのだ)。

 大人・多香子と大人・エリカの芝居を、引きから寄り、また引きとなる一連の撮影。

 ここでは藤田の要望で、カット割りをせずにひと場面づつすべての台詞流れの芝居を撮影していく(俳優の心情上、1シーンの芝居を途切れさせずにひとつのカットで撮影しきるやり方が採用された)ことに。

 会話だけのシーンではあるので、ある意味、大人の女優たちの見せどころのひとつになるのかと思っていたら、意外にそんな丁々発止的なことになることもなく、実にさらりと、スムーズに撮影は進んでいく。

 本当に昔からの友達が久しぶりに喫茶店で会って会話している、そんな様子にしか見えない普通さ。

 後にインタビューした際には、なぜ、大人の女優、しかも初対面の者同士がそれほど自然に振る舞えているかの理由も語られている。そこで僕も彼女たちの自然さの出発点を知ることになったわけだが、この時点ではまだ判明してはいなかった(劇場用パンフレットのインタビューでそれぞれの女優たちが、この映画での役に体する姿勢を明らかにしているので、ぜひ読んでいただきたいと思う)。
 
 喫茶店内での大人・多香子と大人・エリカ2人の会話シーンを終えた後は、すぐに次の撮影現場に移動。

 まだ陽のある夕方からは(と言っても雨模様のために、すでにかなり薄暗くなっている時間帯となってしまった)、映画館・かもめ座での撮影となる。

 移動を終えてから監督に「今日は雨でつらいですね」と聞くと、「雨の中でも頑張ってやろう、というイメージになるので、雨はむしろジャマにはならないと思ってる」との答えが返ってきた。

 映画の撮影現場は当たり前だが、何にでも前向きに捉えるのだと改めて感じ入る。

 かもめ座の前では、まずは市民俳優の方々と、大人・多香子、大人・みどり、大人・将太の3人が揃う。

 現在では使われなくなり、古びてしまったかもめ座を、ある目的のために掃除しようという場面が撮影される。

 雨はやや小降りにはなったが、まだ止んではいない。

 かもめ座の外観を撮影するために、キャメラには雨粒がかからないようにビニールカバーをかけて、撮影が開始される。

 キャメラ・ポジションを決めて撮影、移動の繰り返しが何度か行われる。

 雨も降ったり止んだりを繰り返しているが、スタッフは雨具を着用することもなく動き続けていく(雨がずっと降り続けているなら、雨合羽などを着用して撮影に臨むが、着替えする時間も惜しいのだろう)。 

 天気予報では「今日は1日雨」。その予報は当たりそうである。

 太田組の撮影現場では、これまで比較的天候には恵まれていた記憶がある。雨の日もその雨を映画では効果的に盛り上げるための自然状況のひとつとして撮影には利用されてきた。

 雨の話をすると、映画撮影では外でロケしている時に、劇中で雨が降る場面では雨ふらしと言って、スタッフが人為的に大量の水を撒いて雨を表現する。

 自然の天候の中で、雨が降るのを待つことはスケジュール上も出来ないからだ。しかしながら雨を表現する水も無料ではない。大作映画などでは使用する水の量が何十トンにも及ぶことがある。その金額だけでも大変なものになるのだ。

 よく使用されるのは消防車での水撒き。

 しかしながら、一番の問題は水の確保。どれだけの水をその撮影で使用するか、貯水場や河川などが撮影現場の近くにあるならいいが、ない場合は消防車にある貯水量で賄わなければならなくなる(今作では劇中で雨の降る場面では近くの河川から水を組み上げて雨降らしをしている)。

 この日の雨も、これまでの太田組撮影現場でのように、撮影に影響を及ぼすところまではいっていない。不思議なことに、いざ撮影の段となると雨脚が弱まったり、ということが何度もあった。

 本当に不思議で、神がかっているとしか思えない現場。

 しかしながら、その神通力もこの日の後半には効かなくなっていくことに。(つづく)

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