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「脚本家になりたい。でも、月給は20万ほしい」という大学生の友人 [My Opinion]

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友人たちがまだ大学生だった頃の話。そんな1人に将来はシナリオライターになりたいという奴がいた。

が、「脚本家募集」という広告なんて出ていない。昔はテレビ局や製作会社に「文芸部」といって脚本家が所属する部署もあったが、今は皆フリーであり、会社に所属するライターはほとんどいない。

友人はいろいろと探したが募集はなく、普通の会社の社員となった。「月給、20万くらいもらえるなら脚本家になろうと思ったんだけどなあ」という。彼に限らず、同世代の友人たちは映画の仕事がしたいというが「最低でも20万はもらわないとなあ」とか言う者が多かった。

意味が分からない????? 話して分かったのは、大学時代にバイトをしていて、時給900円とかでもらっていた。会社に入れば当時は初任給20万ほど。だから、そのくらいはもらわないと割に合わないというのだ。が、ちょっと待て。バイトは誰にでも出来る仕事。会社に入れば1年くらいは給料もらいながら、見習いのようなもの。つまり、大学卒とはいえ、ほとんどは何の技術も持たない。

にも関わらず、彼らは「1時間働いたんだから、900円はもらわないと!」「1ヶ月働いたんだから、20万はもらわないと!」というものだった。4年間。バイトバイトで過ごして来たので、時間の切り売り=金という感覚なのだ。

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しかし、世の中は技術を持つ者が腕をふるってこそ収入に繋がる。寿司職人は寿司を握れるし、タクシードライバーは運転する。通訳は外国語を日本語に直す。そうやって賃金を稼ぐ。大学生の友人たちには、その感覚が分からないようで、何時間働いたから。何日働いたからいくら?という発想なのだ。だから、「シナリオを書いたら月に20万!」とか技術もないのに、言えてしまう。

脚本家という仕事は過酷。単に物語を作り、文章にすればいいというものではない。ノーギャラでもいいから書きたいという新人はいくらでもいるが、力のない者に仕事は来ない。ギャラをもらって仕事をするまでには何年もかかる。最低でも5年。それも何本も何本もシナリオを書き、腕を磨く。でも、ギャラがもらえるようになるには何年もかかる。その間の生活費は別の仕事で稼がなければならない。

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だが、大学生の友人たちは「シナリオを書く」という作業をしているんだから、当然、賃金をもらわなければ!という感覚なのだ。それが今から30年ほど前の話。

今はどうだろう? ときどき映画学校の特別講師をさせてもらう。シナリオ科の生徒たちと話すと、あの頃の大学生たちとあまり変わらない発想であることが分かる。専門学校でシナリオを勉強すれば、卒業してから脚本家になれる....と思っているようだ。

教員からは「映画界は厳しい。卒業しても仕事はないぞ!」と言われているのに、課題のシナリオ以外は書こうとしない。バイトしたり、コンパしたりして、学生生活を楽しんでいる。同世代の大学生もそうだったが、そんな彼らを「世間知らず」と批判するのは簡単だ。が、なぜ、彼らはそんな風になってしまったのか?

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友人たちを見ていると分かるのだが、これも教育の成果(?)なのだ。日本人は16年もの間、与えられたことをこなす勉強を強いられる。「考える」という勉強は少しだけ。趣味や遊びはいけないことで、勉強することが大事と大人たちに言われて育つ。大学に入り、ようやく、時間ができるが、与えられることがなくなると、何をしていいか?分からない。だから、コンパとバイトで4年間。バイトをすれば、時給がもらえる。

卒業すると就職。月給取りになる。つまり、多くの日本人は与えられたことを確実にこなすだけで、22歳あたりまで来てしまう。もちろん、専門学校や各種学校で手に職をつける人たちもいるが、普通に大学に行くと、何もできないまま20歳を迎える。それでもサラリーマンになれば、また与えられた仕事をする。

ただ、そこで「脚本家になりたい。映画監督になりたい」となると、それは技術が必要だ。「大学時代にシナリオを書いたことがある。専門学校で勉強した」だけでは通用しない。見るものを感動させるドラマを書くというのは、簡単なことではない。

だが、多くの若者は「シナリオを書けば、ちゃんと生活できる給与をもらいたい!」と主張する。どんなクオリティのシナリオか? をさて置き、自身の労働に対する報酬を要求する。これはバイトとシナリオ書きを同列で考えてしまうからだ。「専門学校を出たのだから、映画界で仕事ができるはずだ!」とも言う。大学を出れば就職。会社員! というサラリーマンになるのと同じ発想で考えてしまう。

料理人になるのも、工芸品を作るのも、イラストを描くのも、全て技術。シナリオを書くのも、映画を監督するのも、俳優をやるのも同じ。技術を持つということ。それをアルバイトをすること。会社員になるのと同じ発想では通用しない。小説家でも、漫画家でも、音楽家でも同じ。

でも、僕が訪ねる専門学校のクラスでは、そのことが分かっていない子が多い。子供の頃から与えられたことしかして来なかったので、考える力が弱い。「自分の夢を掴むために何をするべきか?」を考えることができない。これも日本の教育システムの「成果」なのだと思えてしまう。


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