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「向日葵の」主人公と同じく、30年振りに帰って来た「マッドマックス 怒りのデスロード」。 [映画の話]

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30年振りの続編だ。「マッドマックス 怒りのデスロード」。

金にもの言わせたハリウッド製アクション映画だと思いつつ、過去の3本は全て観ているので、劇場に向かった。確かに「これでもか!」という製作費のかかったアクションの連続の映画ではあったが、予想を超える作品でもあった。

簡単にいうと、物語のベースは西部劇の名作「駅場所」である。いろんな人の運命を乗せて、荒野を突っ走る大型トラック。襲撃するのは「駅場所」ではインディアンだが、こちらはパンクなアウトローたち。ただ、主人公のマックスは最初から捕まり、しばらくは拘束されたまま。ん?活躍しないの?という疑問。だが、それはあとで解き明かされる。

緑の地を求めてひた走る大型トラックと逃亡者たち。しかし、その結末は? そのあたりから物語が行こうとする場所が見えて来る。この先はネタバレになるので、「観る!」という方はここまでにして、まずは映画館に行って頂きたい。価値ある1本だ。さて、すでに観た方。そして、まだ観るか?迷っている方は先に読んでほしい。

結局、緑の地=楽園はすでに荒廃した沼になっていた。失望する逃亡者たち。ここから凄いのは、マックスが「砦に戻ろう」ということ。シナリオの仕事をしているものとして、物語を逆行するのは面白くならない。前へ進むからこそ盛り上がるので????と思うのだが、この映画がやろうとしている本質を僕は理解していなかった。

要は、この映画。今の日本といっても過言でない物語なのだ。砦には貧しい人たちが大勢住み、狂った権力者と一部の人間が水を独占して、裕福な生活をし、貧しい民を支配している。耐えきれず、そこから逃げ出したのが先の逃亡者たち。しかし、その場所にマックスは戻ろうというのだ。そう、この物語は「過酷な現実から目を背け、楽園を探して逃げ出してもダメなんだ。本当の楽園は今いる場所にある。そこで、戦い、勝ち取り、自らの手で楽園にしなければならない」というメッセージなのだ。

まさに今の日本ではないか? そして青い鳥であり「約束された土地」を探す物語なのだ。残酷極まりないクライマックスのアクションシーンで涙がこみ上げる。そして、全ての意味を提示するラストのクレジットで涙が溢れた。極論を言えば、これは日本人へのメッセージなのだ。「諦めてはいけない。戦え!」それを監督のジョージミラーは伝えたかったに違いない。

これでなぜマックスが最初、主人公らしくないかも分かる。この物語を作る上で、そのメッセージを多くの人に伝えたいとミラー監督は考えただろう。「女戦士が活躍する近未来アクションでは、どれだけヒットするか?分からず、映画会社は資金を出し渋るかもしれない」そこで「これはマッドマックスの新作です」ということで、もの凄い額の製作費を引き出し、ミラー監督はこの作品を実現したのだろう。

山田太一さんが車いすの青年の物語を書きたかったが、なかなかテレビ局が受け入れないことで、人気シリーズ「男たちの旅路」の1編として実現したこと(車輪の一歩)。井筒和幸監督が在日の歴史を描く映画を作るために大ヒット「パッチギ」の続編として「ラブ&ピース」を監督したのも。大切なテーマだが、ヒットしにくい題材をヒットシリーズの1本として制作したのを思い出す。

「怒りのデスロード」はまさにそんな1本。だから、本当は「マッドマックス」シリーズではない。「外伝」的な存在。そこに何とかマックスを入れ込んだ作品にしているのだ。だから違和感はあるが、それでも素晴らしい。まさか「マッドマックス」で泣けるとは思わず。僕の新作「向日葵の丘」と通じる、まさかのテーマもあり。仰天した。

もちろん、日本人に向けて作られた訳ではないが、今の日本の姿と、今の日本人を勇気づける作品になっている。お勧め!

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