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町おこしのための地域映画が成功しない理由?⑪ 最終回 僕の場合? [町おこし映画の問題点]

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  僕が監督した映画は全て地方で撮影。いずれもロケ地から多大な協力や支援を得て作っている。撮影から宣伝まで、町の方々の熱い応援がなければ成り立たなかった。今もそれぞれの町の方々には感謝している。そして何より、今回まで紹介してきた「やってはいけないこと」「やらねばならないこと」を町の方々は本当に理解してくれたこと。ありがたかった。

 ただ、いくつかの町では「現在、市がアピールしている公園を撮影してほしい」「地元の野菜を紹介してほしい」というリクエストが来た。「町には協力してもらっているし、そのくらいは受け入れようか」と考える監督もいるが、僕はお断りする。

 大事なのは「物語ありき」ということ。物語上で主人公が海岸で荒波を見て復讐を決意するシーンがあったとして、それを地元が「公園で撮影してほしい!」と希望される。だが、海だからこそ盛り上がるシーンを公園にしては無意味。そんなふうに物語に沿わないロケ地で撮ることは作品のクオリティを著しく下げる。

 その公園を使うことで、一部関係者は「宣伝になった!」喜んでくれる。でも、小さなことから物語がほころび、感動作にならなくなる。それは観客への裏切りであり、町の人たちへの裏切りにも繋が。地元をアピールするためにも、まず、感動できる映画を作ってこそ、多くの人が観てくれてロケ地が美しい町として記憶に残る。だから物語を壊す要望は受け入れてはいけないのだ。

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 だが、要望を拒否するばかりではない。僕の場合は自分から進んで地元の魅力を取り入れた作品にする。僕は何年も前から、ロケ地について勉強する。歴史を調べ、産業を知り、何度も町を訪ね、撮影で使わない場所も行く。地元の人と話をし、地元の名産を食べる。春夏秋冬の全てを体験し、それを撮影する。大企業でもそこまでするところは皆無だろう。でも、そうやって町を知り、好きになってこそ。その町を描ける。

 あとでシナリオに無理矢理、町の名産を食べるシーンをねじ込むのではなく。町を代表するもの。或は外部の人が見て喜ぶものはシナリオを書く段階で入れる。タイアップとかではない。僕自身が興味を持ち、それをモチーフに物語を進めるためだ。これを頼まれて挿入したら物語が壊れるが、最初からエピソードとして組み込めば見ていておかしくない。

 撮影の頃には、僕は町の人より、町に詳しいことが多い。市民を集めて町の魅力を語る講演会をしたこともある。意外に町の魅力を知らない人が多い。地元の人は「大した町じゃないですよ」というが、どこの町にも素敵な風景が必ずある。東京に負けないものがある。そんな町の素晴らしさを町の人に再確認してもらう。それが僕の映画のテーマでもある。町をアピール、宣伝することも大事だが、町の良さを見つけることも大きな意味があり、映画作りはそれを実践できる。

 日頃見慣れた古里の風景も、映画のスクリーンで見ると本当に素晴らしいものだと思える。映画というのは旅人の視点なのだ。見慣れた自身の目ではなく、外からやってきた旅行者の目で見ている。だから、見慣れているのに素晴らしさに気づく。「そうか、うちらの町はこんなに美しかったんだ」そう感じてもらうのも僕の映画作りの目的。

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 そして、僕は町のPRのみのために映画作りはしていない。だから、東京で上映しても映画として評価される。他の地方でも客が来てくれる。これが「***市の映画」としてPR目的で作ると「何で、知らない町の宣伝を見なきゃいけない!」となるが、僕の映画は一般の商業映画。町の宣伝が一番の目的ではなく、感動を伝えるのが一番。でも、その映画を見れば、ロケ地の素晴らしさも自然伝わる。

 でも、このやり方は時間がかかる。最初、製作費が集まる前、自腹で町に何年も通う。その後、経費として交通費をもらおうとすると、一部の人は「監督は金取るんですか?」と言い出すことがある。僕が一生懸命やるほど、仕事ではなく、ボランティア活動だと思い込む人がいるのだ。反対にロケハンと撮影にしか来ない監督を「あの人はプロだ。忙しいんだ。短い期間だけど、町に来たら歓待しょう」と思うようだ。

 何度も町の人と接し、親しくなると、僕が仕事で映画を作っていることを失念され、監督料を取ると「金のためにやっていたのか? 失望した」と言われる。が、実際、もらうギャラ以上のことをやっているし、毎回、残るの借金だけ。映画は町の宣伝にもなり、多くの人に喜んでもらえるが、一部の人から、特に映画に深く関わった人から、そんなふうに言われると、悲しい。

 そして、映画が無事公開されると、僕は毎回、過労で倒れる。何ヶ月も寝込み。さらに借金が嵩む。それでも地元の人が映画を喜んでくれたのだから、これでいい.....と思うのだが、このやり方を真似る監督はいないし、町的には有名な映画会社が魂胆ミエミエで撮影に来ることを無邪気に喜ぶことが多い。ちょっと、僕もやり方を変えないと、このままではダメと感じる。
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 ただ、新作映画の撮影をするときに、前の映画のロケ地、前の前の映画のロケ地の方々が手伝いに来てくれる。「金のためにやっているのか?」と批判する人もいるが、そんなふうに遥々、ロケ地に来てくれる人たちがいることは本当に嬉しい。がんばってよかったと思える数少ない瞬間だ。

 もし、町おこしのために映画を作ろうと考えている方がいれば、このシリーズが何かの役に立ってもらえれば幸いだ。また、機会があれば続きを書く。

 おまけ=>http://aozoraeiga.blog.so-net.ne.jp/2015-10-25-10




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