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町おこしのための地域映画が成功しない理由?⑧宣伝の大切さが分からない? [町おこし映画の問題点]

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地元をアピールする映画を作るとき、いろいろと問題が起こること書いて来た。ロケ地、キャスト、シナリオ。それらに地元が口を出し、作品をダメにすることが多い話も書いた。一般の人には分かり辛いものが多く、皆、良かれと思って作品をダメにするので悲しい。

そんな中でも一番理解されないのがやはり「宣伝」だ。業界のこと。一般の人はかなり知識がある時代になって「F1層」とか「ツーショット」とか「広告代理店」とか「タレント事務所」とかの存在や意味を知る人が多いのに、驚くほど宣伝の方法論を知る人は少ない。

友人のC君。彼は若き映画監督で、ある町を舞台にした地元製作の映画を頼まれて監督した。町の大いなる協力で撮影は無事に終わり、映画は完成。いよいよ、地元映画館で公開となった。お世話になった町なので、数日前に訪ね。最後の宣伝を手伝おうと思ったのだ。

が、C君が目にしたのは驚くべき現実だった。町には1枚も映画のポスターが貼られていない。公開が数日後だというのに、町で訊いても誰も知らない。こんなことでいいのか? 公開日には東京から俳優たちも来て舞台挨拶を行う。初日がガラガラだと大変だ。

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多くの人が応援してくれたのに、上映を知らなければ見ることができない。東京から来る俳優たちも劇場がガラガラだと悲しむだろう。C君は町の長老に会い行った。「このままではまずいです。宣伝して、映画公開日を伝えましょう!」と言ったら、長老さん。意外なことを言い出した。

「お前は自分の作った映画に自信がねえのか? 自信がないから宣伝しようなんていうんだろう。いい映画を作れば、客が感動する。それが口込みで伝わり客が来る。今さらジタバタするんじゃねえ! 男らしく結果を待ちな」

C君は唖然とした。「長老さんは何も分かっていない。宣伝の大切さを知らなさ過ぎる」その通りだ。映画は初日にどれだけ客が入るかが勝負。その人数を100%として、そこから日を追うごとに客数が減ってくるというのが基本。その意味で初日は大量動員しなければ映画はヒットしない。

同時に、映画館は初日の動員数で上映期間を決める。満員なら4週間。そこそこなら2週間。もし、初日がガラガラだったら、どんなにいい映画でも口コミが伝わる前に上映は終了する。それが映画興行なのだ。だから、初日を満員にするために、公開直前の1ヶ月は大々的に宣伝する。

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なのに、町にはポスターすら貼られておらず、市民は公開日を知らない。当然、テレビや新聞に広告はでない。なのに長老は「今さらジタバタするな」というのである。そこでC君は今からでもポスターを貼ってまわり、宣伝をしたいと頼んだ。が、長老はさらに怒る。

「よく、そんな失礼なことを言えるな。俺たちゃみんなで前売り券を売ってまわったんだぜ。頭を下げて多くの人に買ってもらったんだよ。その苦労を知らず。何が宣伝だ!」

しかし、前売り券には公開日は印刷されていない。どうやって初日を知らせるのか? そのために宣伝が必要なのに、長老は「チケットを買ってもらった上に、映画館に来いなんて失礼なことはいえない」というのだ。

ここに誤解がある。地方でコンサート等があるとき、地元の団体等がチケットを引き受け販売する。が、コンサートは1日限り。チケットにも印刷されている。だから、売り終われば仕事は終了。あとは、公園日に客は各自で会場に来てくれる。が、映画の場合は公開日が印刷されていないことがある。宣伝等でそれを伝えないと会場には来てくれない。長老はそれを混同していたのだ。

おまけにチケットを売り切ったのは数ヶ月前。買った方は完全に忘れているだろう。チケットはタンスの中かもしれない。だからこそ、「いよいよ公開ですよ!」ということを宣伝しなければならないのだ、自信があるとかないとか関係ないし、客が来なければ口コミさえ広がらない。コンサートのように放っておいても客は来ないのだ。

それでも長老は「お前は本当に失礼な奴だ!」と怒るばかり、C君はなす術がなかった。公開初日、映画館はガラガラだった。俳優たちはそんな劇場で舞台挨拶をした。長老はいう。「おかしいなー。前売りもかなり出たし、映画のことは皆、楽しみにしているはずなのになー」来ないのは当然だ。

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ここまで何度も紹介したが、映画作りや宣伝に詳しくない地元の方が、自分なりの解釈で、撮影や上映を押し通そうとすることがある。だが、それは映画を盛り上げるのではなく、もり下げることにしかならない。C君はいう。

「長老も悪い人じゃない。撮影中は本当に助けられた。でも、驚くくらいに宣伝というものを分かっていない。一般の人だから分からないのは当然だけど、説明しても理解しようとせず、先入観や既成概念でものごとを判断。すぐに怒り出す。本当に悲しい...」

その通りだろう。こうして皆が力を合わせて作った映画が、東京で公開されるどころか地元でも盛り上がらずに終わることが結構ある。そう考えると宣伝の重要性が分かる。

だが、これは「町おこし映画」の問題だけではない。日本人は日本の発想に囚われてしまう。映画作りをしているのに、地元発想、素人発想で進めようとする。過去の経験や価値観に囚われる。或は時代が変わり、環境が違っているのに、古くさい方法論で対処しようとして大失敗する。

それは地方だけでなく、日本という国ではよく見かけること。未だに景気がよくならないのも、不況だというと「公共事業」という古い発想で対応しているからではないか? 地方の復興というと、箱もの作り。そんな古い発想だからではないか?まず、そこを見つめないと、日本の復活も、地方の展開も簡単には行かない。

 続き=>http://aozoraeiga.blog.so-net.ne.jp/2015-05-19-3




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