町おこしのための地域映画が成功しない理由?⑦ 何もメリットがない町のイベントをやめられない? [町おこし映画の問題点]
都会では映画を撮らず、地方でばかり撮影している。太田組の映画はいつしか「古里映画」と言われるようになり、次第に評価されてきた。町の魅力を描きながら、物語としても感動できる。これがなかなかできないというのだ。そんなこともあり、ときどき地方の方から相談を受ける。ある地方都市の市役所。観光課の課長さん。こう訊かれた。
「この町の財政厳しいんですよ。漁業もアカン。林業もアカン。工業は小規模。農業もアカン。そやから観光で収入増やすしかない。でも、たいした史跡もないし、温泉もないし、観光客が来てくれへん。それで映画でも作ったら、PRになるて聞いたんです。大林監督の尾道シリーズみたいな映画を作ったら観光客が来てくれる。けど、何億も出す余裕はない。監督。映画作んのっていくらかかるんですか?」
僕は答える。ボーイ・ミーツ・ガール的な特撮もアクションもない、有名俳優もたくさん出ないドラマで企業映画は最低1億くらい、独立系なら最低3000万くらいですね。ま、それだと深夜ドラマ・レベルの作品ですけど。そう答えると課長さん。ため息をついた。高額過ぎる!という反応?と思ったが、そうではないようだ。
「3000万ですか......この町でも集めようと思ったら集まらないことない額ですね。というのは、毎年夏に花火大会をするんですよ。その費用が同じ3000万。けど、これも問題があってねえ。もともと、近隣の町の人たちを花火大会で呼ぶことで、この町で飯食ったり、買い物したりで金を落としてもらおうという観光イベントやったんです。それが近所の町でも同じことを始めた。今、花火大会に来るんは、この町の人だけ」
課長は真剣に話を続ける。
「全然、観光PRになってない! おまけに花火大会の費用。市民は市の予算でやってると思てますけど、市民の寄付なんです。それを我々観光課が集めてまわる。大手の会社や余裕のある個人にお願いしても、何で寄付せなアカンね? 花火大会らやめたらええんや。と言われます。ほんまにその通りなんです。町のPRにはなってない。来るのは市民だけ。けど、ほんまにやめたら市民から、何でやめんね! 楽しみにしてたのに!と言われる。せやから、歴代の観光課課長はやめられへん。あいつが花火大会を止めた張本人や!と延々に言われるからです」
何とか悲しい話だ。PRにならない花火大会。その費用を市民は寄付したがらない。でも、やめると文句をいわれる。だから、続ける。この町でも、そんな無意味なことに労力とお金を費やしているのだ。課長はいう。
「ホンマはですよ。今年の花火大会は止めて、集まった寄付で映画を作ればいいんです。同じ3000万ですから。その方が遥かに町のPRになりますよー。花火大会は夏に1時間ほどやったら終わりですけど、映画は何度でも上映できる。この町だけとちごて、東京でも、大阪でも上映される。太田監督の映画ならアメリカやヨーロッパでも上映されてる。この町が日本全土、世界にアピールできるんです。同じ3000万で。凄いことじゃないですか!」
課長さん。なかなか鋭い。その通りだ。映画の対費用効果はもの凄いものがある。その上、映画館だけではない、イベント上映、テレビ放送、ケーブル&衛星放送、DVD、ネットと、いろんなメディアで発信される。その町の花火大会は人が集まって数千人。でも、映画なら何万。何十万人が観ることができる。課長は続ける。
「その方が町のPRにはなる! 少しでも観光客が増えたら旅館や土産物屋。飲食店のプラスになる。せやけど、うちの観光課。そんな話しても誰も分からんでしょうねえ。それより、『花火大会やめたら、文句いわれますよ。責任追及されますよ』という奴がでてくる。まあ、僕も、花火大会はもうやめよ!とはいえないんですけどね。市民のほとんどは市の予算でやってると思い、企業や市民は寄付をいやがる。観にくるんは市民だけ。皆、毎年、夏に花火大会するんは当たり前と思っている。楽しみにしている人はそんなに多くないんですよ。何かむなしいですね」
本当にその通りだ。が、地方のイベントにはこんなことが多く、あまり意味がないのに「やめよう」というと文句が来るのでやめられない。町のプラスにはならないのに10年以上続けている。そのくせ財政が厳しい。赤字だ。と嘆く。
ここでも地方の問題点が浮き彫りになる。お金がないのではなく、無駄使いを止められないのだ。意味のない慣例や恒例の行事を続けている。課長のいうとおり、花火大会やその他の行事を一度だけお休みして、映画を作った方が町のために大きなプラスになる。が、それが分かっていても、手を上げる職員はいない。それが地方の現実なのだ。
続き=>http://aozoraeiga.blog.so-net.ne.jp/2015-05-19-2
2015-05-16 10:23
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