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監督が望むキャスティングができない理由。僕がわがままを通す理由。 [映画業界物語]

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「映画の出来はキャスティングで70%が決まる」

 といったのは確か伊丹十三監督のお父さんである伊丹万作であったと思うが、本当にその通りだ。にも関わらずに本映画界では、最高責任者であるはずの監督が思うようにキャスティングできないという状況が多々ある。なぜなのか?

 先日、後輩監督から聞いた話。彼の新作映画。主演女優を選ぶことになった。製作会社のプロデュサーが「A子で行こう!」と言い出す。彼女は大手プロダクション所属で、今年の大手テレビ局のドラマに出演が決定している。ブレイクしそうだし、すでに人気はある。この子を主演で行こうと主張する。

 一方、後輩である監督はもう一人の最終候補であるB子がいいと思っていた。同じ大手プロダクションだが、こちらは大きな作品への出演は決まっておらず。現在も、それほど人気はない。彼は「こっちがいいんだけどな〜」と思っていたが、Pが「A子でないと、映画はヒットしない!」と押し切られた。

 が、A子主演の映画は惨敗。

 客が入ったのは初日の舞台挨拶がある日のみ。Pはいう「あいつも意外にダメだなあ」この話は以前にも書いた。俳優人気を頼りにしていては結局、こういうことになる。が、後輩にも問題がある。どこかで「Pのいうことに逆らうと、次仕事がもらえなくなるかも...」という不安があって、A子主演を受け入れたからだ。

 往々にして、そんなことはある。監督が「この子がいい!」と思ってもPが「こっちにしようよ?」というと、「そうですねー」とか迎合してしまう。或いはPが「**役はこれでお願いします」と俳優のプロフィールを渡すと、事実上の命令だと解釈し、監督はそれを受け入れる。(ま、Pは自分が言えば必ず受け入れられると思っているし)

 しかし、その俳優の事務所とPは癒着していて、

 1人キャストに入れるといくらもらうとか、何かのときにお返しをしてもらえるということで俳優を決める。監督は「えー少し違うなあ」と思っても「また仕事まわしてもらわないと、いけないからなあ〜」とおとなしく従う。

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 こうして監督のイメージとは違う俳優が次々に押し込まれ、キャスティングが壊れて行く。たいていの場合。その種の映画はミスキャストとなり、????な展開となる。あとで監督に訊くと「本当は**子で行きたかったんだけど...」と言われる。だが、そんなことでいいのか?

 伊丹万作の言う通りキャスティングは重要

 それを監督が意図しない俳優を入れていいものが出来る訳がない。「現場の演出で俳優をうまく使うのが監督の仕事」という人もいるが、それは大間違い。その監督が「いい!」と思わない俳優は演出してもダメ。別のいい方をするなら、監督がほしい「センス」「素養」「性質」「雰囲気」「演技力」等を持っていない俳優だと、いくら努力しても出ない。

 何よりPの多くは、その手の資質を見抜く力がない。おまけに演出経験もない。そんな人が「この人がいい」と言われてもダメ。単なる癒着であることも多いし。例えばレストランのオーナーがシェフに、料理の材料を指定するのと同じ。料理しない人間があれこれ素材を選んでも、おいしい料理は作れない。

 だから、いい作品を作るには

 監督が100%「これだ!」というキャスティングにすることは大事。でも、多くの監督は常識があり、分別があり、今後のことを客観的に考えて、大人の対応で、Pの意見を尊重。「この役者は違うよなあ〜」と思っても受け入れる。

 ただ、僕は常識がなく、分別もなく、今後のことを考えず、子供なので、Pの意見は聞かない。毎回、遺作と思っているので、「次の仕事がほしい」とは考えない。「これで終わり!」と思っているので、本当に「この人だ!」という俳優を入れる。だから、同じPから再度、仕事依頼が来たことはない。

 だが、キャスティングの評判はとてもいい。

 僕の作品に出たあとブレイクした子が何人もいる。「太田監督の映画に出る俳優は皆、輝いている!」と言われるようになる。その後は確信を持ち、あれこれ無意味な指示をするPがいると良い作品が撮れないので、今では僕がPも担当。

 でも、なぜ、俳優が輝くのか? 理由を考えてみた。たぶん現場で俳優さんたちも気づくだろう。キャスティングを観ると**プロダクションの人が多い。「なるほどー、Pさんはあそこと仲いいからね...」とか「じゃあ、***事務所のオレはあまり重要でない役だな?」とか

 その**プロの俳優さんだって、「あー私の実力で選ばれたんじゃないんだ。事務所の力なのね」とやる気をなくすだろう。でも、僕は無名でも有名でも、本当に出てほしい人に、その役を絶対に演じてほしい俳優にお願いする。誰が何といっても聞かない。わがままと言われる。Pには嫌われる。でも、俳優たちは凄く輝いてくれる。それが素敵な映画を作る上でとても大切なことだと考える。


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