映画の中にもう一本の物語ー黒澤明監督の「赤ひげ」と「向日葵の丘」 [編集]
もう一度、正確にタイムを計ると、
前半が1時間9分50秒。
後半が1時間5分21秒。
合計、2時間15分11秒。
「あと、11秒くらい、がんばって切ればいいのに」という人もいるだろうが、水泳のタイムではない。短ければいいというものではなく。物語にとって本当に必要な時間と、観客が映画を観ていられる体力とを考えて設定した時間にどこまで近づけるか?が大切。その意味では目標達成である。
まあ、でも、最初は2時間45分もあったのだから凄い。それを30分も短くした。といっても、まるまるカットしたシーンはそう多くはない。1シーンだけある俳優に問題があり、全く使わなかったが、それを入れても*****、*****、と短い場面が3つくらいだ。
ほとんどのカットは各シーンの頭と最後。
そしてそれぞれにカットを1秒、2秒とカットして行った。だからこそ、30分切っても物語は繋がるし、説明不足にはなっていない。そう書くと業界の友人などは「だったら、もう少しがんばって2時間にすれば、いろんな面でメリットが多いのに!」と必ずいうが、それは駄目だ。
今回の映画。というより、僕の作品は基本的に長い。なぜか?というと、実は中身が通常の映画の2本分あるからだ。時間ではない物語がだ。分かりやすくいうと、本来なら2本の映画として作れる分量を1本の映画として完成させている。近い形でいうと黒澤明監督の「赤ひげ」
あの映画は2本どころか、4、5本分の物語の分量がある
(原作は短編集だし)中でも、山崎努さん演じる佐八のエピソード(地震で恋人と生別れになる話)はそのまま1本の映画にできるだけの中身と分量。本来の主人公は保本(加山雄三)なのに、あのパートは完全に佐八が主人公。保本は登場しない。まさに、山崎努・主演の物語となっていた。
通常、あの種の話を持ち込むと映画内映画になってしまい、上映時間が長くなる(実際「赤ひげ」はそうなった)だから、台詞で説明したり、フラッシュバックで回想させて時間をかけないようにする。それが多くの映画の手法。でも、それでは、あの佐八の悲しみや葛藤を伝えることはむずかしい。あそこまで延々と描いているからこそ、体感できる。
だからこそ、加山雄三演じる保本が心変わりする場面でも
納得いくのである。それと同じ手法を使ったのが僕の監督2作目「青い青い空」。熱血教師・八代先生(波岡一喜)の過去。彼とオカンとの物語がかなりの時間を割いて描いた。だからこそ、生徒たちが真剣になって行く心境にも共感し、最後はもう応援せずにはいられなくなる。それは「赤ひげ」から学んだ手法。
なかなか、むずかしく。手間も時間もかかるので、あまり実践する人はいないが、お手軽テレビドラマ(回想やうわさ話で人物を簡単に紹介する)方法論では伝えられないものがある。今回も、それに近い手法を使った。だから、2本分の物語が混在する。「青」は生徒たちと八代先生。さて、今回は? ヒントは「GF2」ー
その手法がとてもうまく機能していて、下手すると今回の物語は「青い青い空」路線の第二弾と思われそうなところが、それを凌ぐものが出来きそうだ。ともあれ、それを2時間15分でまとめられたのは、自分でビックリ。
それが出来たのは多くの俳優が役やテーマを理解し、魂を削る芝居をしてくれたからである。と、長々書いたが、本日は書き出し大会である。
2014-08-28 11:57
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